書評:『ニコニコ動画が未来を作る〜ドワンゴ物語』佐々木俊尚/アスキー新書125

IT関連の著作が多い著者だけれども、個人的な感想として、佐々木俊尚はビジョナリーというよりも歴史家向きといえばいいのだろうか。「将来こうなっていく」という内容を書いた作品よりも、概念的な緻密な取材と構成によって綴られた「現在までにこういう経緯を辿ってきた」というノンフィクションストーリーを書いた作品のほうが圧倒的に読んでいて面白いと思う。そういう意味で、著者の作品はこれまで色々と読んできたけれども、本作は抜群に面白かった。

いまネット界でもっとも注目されるサービス「ニコニコ動画」。それは、廃人と奇人と天才によって生み出された。オンラインゲームでマニアをうならせ、ケータイ着メロで一世を風靡し、ニコニコ動画で新しい文化を創造しつつある会社・ドワンゴは、いかに生まれ、育ってきたか?才能たちが織りなすビジネス群像劇。

本作はいかにしてドワンゴニワンゴという会社が産まれ、そしてニコニコ動画の誕生・そして現状までの流れがあったのかを綴った物語だ。サービスそのものよりも、そこに携わった人たちの経歴を辿ったことで、本書はとても面白く仕上がっている。なぜニコニコ動画をつくるに至ったのか、そもそも、どんな人たちがそのサービスを創り出しているのか、単にニコニコ動画を使っているだけでは見えてこない、ある意味でニコニコ動画以上に面白いストーリーがそこにはあったのです。
ドワンゴという破天荒な会社が誕生した日本も、なかなか面白いところだと思えますよ。そして、ドワンゴはまだ過去の会社ではありません。この先、ニコニコ動画を超えてどんな驚きを産みだそうとしているのか、ワクワクしてくると思いませんか?