書評:『ホンダの価値観〜原点から守り続けるDNA』田中詔一/角川oneテーマ21(新書)

お部屋を整理していたら出てきた積ん読本(^_^;)。

ホンダの価値観―原点から守り続けるDNA (角川oneテーマ21)

ホンダの価値観―原点から守り続けるDNA (角川oneテーマ21)

  • 第一章 経営者の「引き際」とは何か
    • 経営者の「引き際」/偉大なる"汚れ役"/ユニークな会長制度/経営の振幅/「悪魔は細部に宿る」
  • 第二章 ホンダの異端伝説
    • 完了にかみついて始まった四輪進出/レースはホンダのDNA?/生命をあずかる仕事/技術のホンダを支える「文系軍団」/松明は自分の手で/桑の根っ子を引き抜くな/本業以外に手を出すな/得手に帆あげて
  • 第三章 歴代6社長と企業理念
    • ホンダの企業理念と歴代6社長/ホンダの社長はいばらない/サービス精神のDNA/次工程はお客様/お国のため/ブランドの重さ/負けず嫌い社長/自由闊達の風土/人間尊重
  • 第四章 国境を越えた世界戦略
    • 良品に国境はない/販売店は儲かっているか?/品質が全て/二輪、四輪そして汎用/グローバル・ネットワーク/営業とは荷繰りのことと見つけたり/文化と価値観/複眼思考
  • 第五章 海外駐在でのビジネス学
    • 何人の人と会った?/組合員が戦場へ/即断即決の妙/すべてが「現地主義」/取引先の説得のコツ/100%主義の是非/駐在四ヵ条/海外版山本五十六/現地スタッフの使い方/「案ずるから産むが易し」
  • 第六章 社会人としての生き方
    • 弱みをみせろ/拾う神あり/嫌な上司と嫌な転勤/結果が全てか?/目指すはプロフェッショナル/仕事は会社のためにならず/仕事と家庭/「王よりも王党派的」

まだ黎明期であったホンダに入社し、海外開拓の先鋒として活躍した著者による新書作品。
技術者ではなく、営業の立場からホンダの経歴や内部を描いた著作は珍しいのではないだろうか。技術のホンダを支えた著者の視点から、ホンダの何が優れているのかについて考察している。とはいえ、著者は退職前にはHRD(ホンダ・レーシング・ディベロップメント)の社長までを務めているのだから、ホンダの神髄に携わった立場にいた。歴代社長を間近に見てきた立場であった著者が記した本として、日本が産んだとても面白い会社ホンダを少し深く理解することができる作品だった。

ホンダの工場には「次工程はお客様」という言葉がある。
本田さんは、研究所で良い図面が出来ても、それが工場でいかにも作り難い設計だと、雷を落としたという。工場の流れ作業の中では、自分のセクションで早く加工できても、次の工程の人がやり難い形で回せば、次のセクションは苦労するわけだ。だから、次の工程のことをお客様と考えて、物を流せという教えだ。これが出来れば、全体的な効率は上がる。

この「最終ユーザーの声を聞く」という活動も、「次工程はお客様」という考えも、大きくとらえれば、「サービス精神」と言えるだろう。これをホンダは社内で「三つの喜び」という言い方で企業理念としている。これは既に創業時代から本田さんが言っていたことだが、「(研究所と工場は)作って喜び、(営業は)売って喜び、(お客さんは)買って喜ぶ」という三つの喜びを追求するのがホンダなのだ、ということだ。