DELLがScalentを買収:なぜインフラ統合管理ソフトを必要としているのか

DELLが7/1にScalentを買収しました。Scalentは2003年にシリコンバレー(パロアルト)に設立された非公開企業です。一時はHPとパートナーシップを締結し、その後EMCやUnisys等に対してもOEM契約を結んでいましたが、最終的にDELLによる買収案を受け入れる選択をした模様です。

米国Dellは7月1日、サーバ仮想化管理ソフトウェア・ベンダーである米国Scalent Systemsを買収すると発表した。買収の条件などは明らかにされていない。
Dellは、Scalentのインフラストラクチャ管理ソフト「Scalent Infrastructure Manager(IM)」を自社のデータセンター管理パッケージ「Advanced Infrastructure Manager(AIM)」に組み込む計画だ。

http://www.computerworld.jp/topics/innovation/185770.html

DELLとScalentはすでに2009年からOEM契約を結び、DELLの"Advanced Infrastructure Manager (AIM)"のコアソフトウェアとしてIMを用いてきましたが、DELLはScalentを買収することによってAIMを自社ソリューションとして本腰を入れて展開していくことになります。これまでDELLはソフトウェア技術を自社ではほとんど持たずに、優れたソフトウェアベンダーのソフトウェアをOEMなどのかたちで組み合わせてきていましたが、インフラ管理や運用に関連する分野については積極的な買収戦略を取るスタンスに舵を切った模様で、アプライアンス製品(KACE)に続いて完全なソフトウェア製品の買収に踏み切ったことになります。

ScalentのInfrastructure Manager (IM)については以下のYouTubeムービーがよくまとまっています。

また、DELL Enterprise Technology CenterにおいてScalent Engineerが行っているChat Logもなかなか興味深い内容です。

DELLのAIMについては、以下のリンク先にあるムービーを参照してください。
http://content.dell.com/us/en/enterprise/d/videos~en/Documents~nov2009-dell-aim.flv.aspx

Scalent IMの主な機能は以下の通りです。

  • 管理APIを通じたサーバ(Bladeシャーシおよびサーバを含む)、ストレージ、ネットワークの一元管理
  • 各種OSおよびHypervisorとのAPI連携管理
  • プロビジョニングやフェイルオーバー、リソース最適化などの自動化


Agentを用いたり、API連携による接続であったり等、マルチベンダー管理を行うツールとなりますので対応するハードウェアやソフトウェアは限定されますが、最近は以前と比べて外部APIの公開などが積極的に行われていますので次第に対応範囲は広がっていき、柔軟性が増していくはずです。Scalentはこれまでマルチベンダー戦略を取っていました。DELLに買収されることによってその方針がどうなるかはまだ不明ですが、DELL製品への対応は優先的に行われていくことになるはずです。用いる技術については標準化を標榜しながらも差別化・独自性・優位性をどのようにアピールしていくのか。DELLが本腰を入れてAIMに対する継続的な投資を行いロードマップを示していくとともに、企業文化その他の側面で上手くScalentがDELLに融合していけば、AIMはDELLエンタープライズ分野におけるキラーソフトウェアとなるかもしれません*1

AIMは仮想化専用の管理ソフトウェアではありませんが、物理環境と仮想環境を一元的に管理できることを強いアピールポイントとしています。サーバ・ストレージ・ネットワークなどから構成される「ハードウェアコンポーネント」とOSやアプリケーションなどによる「ソフトウェアコンポーネント」を一元的・統合的にグラフィカルに管理できるソフトウェア製品は、ITインフラをリソースとして使っていたこれまでのステージでは大規模環境の管理者など一部のユーザだけが必要としていたものでしたが、今後ITインフラがサービス化していく流れの中で統合管理ソフトウェアは「サービス管理者」が用いるツールとして欠かせないものとなっていく可能性があります。

*1:逆にうがった見方をすると、DELLIBMやHPと同じようにハードウェアとソフトウェアの両面を抑えることによってベンダーロックインができます。最近はAppleの成功もあり、エンタープライズ分野でも垂直統合型のソリューション化が行われつつありますので、その流れの中でDELLも戦略が次第に変わりつつあるということかもしれません