XenやKVMはコンポーネント化する戦略に注力すべき

Hypervisorとしての基本機能はVMwareと比較してほとんど遜色はなく、逆に優れている点もそれぞれにあるXenKVMですが、企業向けの仮想化基盤としての導入ではVMwareに引き離されつつあるように感じます。自社内にインフラ環境を構築・管理していくだけのリソースを持っている企業や、Webサービスなどを事業としており、そのインフラとして仮想化を用いることにした企業などでは「自分の力で」XenKVMなどを選択することはあると思います。コストメリットやオープンソースであることなどを重要視するのであれば、これらの仮想化ソフトウェアは最有力の選択肢となるからです。しかし、SIerやシステム関連会社などを通じて仮想インフラを導入する企業では、VMwareが提案されて利用されることになる場合がやはり多いのではないでしょうか。商用製品ですのでコストはかかりますが、それでもサーバ台数の削減やスペースコスト、電気代、その他運用コストを考慮すれば数年で元がとれる場合が多いですし、なんといっても管理ツールの使いやすさであったり、トラブル時のサポート契約、ノウハウやナレッジなどの情報の充実度なども重要な要素になっていると思われます。これぞデファクトスタンダードの強み、といったかんじです。
XenKVMには今後も仮想化ソフトウェアの進化を促す競合としてVMwareと競り合って欲しいと思いますが、次の一歩を見据えた戦略として、より特化したコンポーネントとしてのポジションを確立することにより注力してもいいのではないかと私は考えています。
Amazonが提供するクラウドサービスAmazon Web Serviceの基盤としてXenが用いられていることは有名ですが、同時にXenServerやOracle VMの基幹としても用いられています。Xenは多くの場合において、そのまま使われるのではなくインフラを構成する仮想化機能のエンジンとして使われているわけです。なのであれば、表に出るのではなく裏方としてより役立ち、幅広く使われるコンポーネントとして使われるために、よりAPIを充実させたり、必要な機能を柔軟に組み合わせて使えるようにしていくということにより注力するという戦略もアリなのではないでしょうか。ユーザに対して「Xenを使ってもらう」というよりも「実はXenを使っていた」というような状況を作っていくというやり方は、VMwareという1社が提供する「中心的ニーズに対応する」商用製品ではカバーしきれない「薄くともより広い市場」や「尖った特別な使い方を必要とする市場」などに対応することにより、結果的に仮想化市場のパイを広げる形でシェアを広げることになるのではないかと思います。Linuxそのものを仮想化基盤化するKVMも同様の戦略を取ることができるのではないでしょうか。
管理ツールや3rd Party製品連携などの部分が弱点なのであれば、それを逆手にとってコアコンポーネントとしての機能に特化した進化を目指し、ターゲットとする市場に特化した部分やツール群については切り離してしまう。Linuxディストリビューションが乱立しているように、選択と集中によるポジショニングの明確化はできなくなってしまいますが、様々なソフトウェア・サービスなどにコンポーネントとして組みこまれていくことによって、XenKVMはその存在価値を高めていくことができるのではないかと思います。
MorphlabsによるmCloudなど、すでにコアコンポーネントとしてXenKVMを組み入れたソリューションも登場してきています。

Citrixに買収されたことによりXenServerのコアというイメージが強まったXenですが、今後もこうした様々なベンダーの製品に組みこまれていくコンポーネント化について、さらに積極的に取り組んでいったら面白いことになるのではないでしょうか。