書評:『どちらかが魔女 Which is the Witch?』森博嗣/講談社文庫

森博嗣の長編シリーズの登場人物たちによる短編8作がまとめられた作品の文庫化。すでに収録された作品をまとめたものなので、読んだことがある作品も含まれているのだけれども、文庫化ということで購入。

この文庫に収録されている作品は以下の通り。

  • ぶるぶる人形にうってつけの夜 The Perfect Night for Shaking Doll
  • 誰もいなくなった Thirty Little Indians
  • 石塔の屋根飾り Roof-top Ornament of Stone Ratha
  • マン島の蒸気鉄道 Isle of Man Classic Steam
  • どちらかが魔女 Which is the Witch?
  • 双頭の鷲の旗の下に Under dem Doppeladler
  • いつ入れ替わった? An Exchange of Tears for Smiles
  • 刀之津診療所の怪 Mysteries of Katanotsu Clinic

著者自身は長編よりも短編を好むようだが、私としては著者の作品は長編の方が好き。ただ、今回改めて短編を読んでみて「あぁそういうことね」と思う箇所がいろいろとあった。やはり著者の作品を順番には読んでいない私としては、作品を超えた暗示までは気がつかないわけで、こうして改めてまとめられて読み返す機会というのはよかったのだと思う。
基本的にはS&Mシリーズから派生したストーリィに登場するキャラクタたちによる短編なのだけれども、どれもなかなか面白い。短編とはいえキャラクタのバックグラウンドがある程度、長編によって位置付けられているわけで、こうした登場人物たちによる短編は読みやすい。講談社からは同時にもう1冊、著者による自選短編集「僕は秋子に借りがある」も文庫化されて刊行されているのだけれども、こちらはまだ未購入。今後刊行される予定の著者の作品はすでに限られているわけで、さてどうしたものか…。