書評:『クチコミの技術〜広告に頼らない共感型マーケティング』コグレマサト+いしたにまさき/日経BP社

クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング
コグレ マサト いしたに まさき
日経BP社 (2007/03/29)
売り上げランキング: 70

思ったよりも読み応えのある一冊だった。様々な新情報を紹介する人気Blog[ネタフル]のコグレマサトさんと同じく人気Blog[みたいもん!]のいしたにまさきさんの共著。
少々脱線だが、考えてみるとBloggerの著書は共著が多いと感じる。確かに、一人で書くよりもアイデアが出てきそうだし、なによりも一つの視点から書くよりも複数の視点で書かれたた方が様々な考え方や意見が含まれるという意味でより内容が充実するメリットがあるからだろう。本書も2人の著者が各章を交互に執筆する形式を取ることにより、いい方向に情報の視点に幅が生まれている。
第1章ブログ・メディアの登場、では個人ブログが新しいメディアとして企業にとっても無視できない存在となっていること、ブログにおけるクチコミが持つマーケティング面での重要性などについてブロガーの視点からわかりやすく説明されている。特にブログが持つ、既存メディアとは異なるマーケティング要素として「意外なコンテンツがアクセスを集める」とし、実際に著者のブログの中で予想外にアクセスを集めた投稿についてや、ブログのクチコミを大きなマーケティング力として活用して大ヒットした事例として「涼宮ハルヒの憂鬱」などが取り上げられている。
第2章ブログのクチコミ・パワー、では主に企業がブログのクチコミ・パワーを自社製品のマーケティングに活かしている事例などが豊富に紹介されている。ブログに向いた商品とは、ややってはいけない事など、これからブログのクチコミ・パワーを活かすことを考えていこうとしている企業にとっても価値のある情報がある。ブログがメディア化する境目についてなど、アルファブロガーとして多くのPVを集める著者が経験的に認識した感覚などはブロガーにとっても企業側にとってもブログを考える上で意味のある情報といえるだろう。
第3章クチコミの効果測定、ではこれまでマーケティングにおいては具体的な数値として測ることが難しかった「効果」の測定を実施する具体的な方法や活用できるWebサービスなどが紹介される。ネットにおけるクチコミは厳密ではないにせよ、他のメディアと比較するとかなり具体的な数値としてその効果を測定することができる。クチコミによるマーケティングは思わぬところで急激に広がったり、はたまたジワジワと情報が広がっていったりなど、様々な「動き」を取るが、「なぜ急激に情報が広まったのか」、「どういう理由で情報が伝えられているのか」、「どのように情報は伝えられているのか」など、いわゆるマスメディアでは追い切れない「効果」を具体的に測定できることはブログ・マーケティングにおいてとても重要な要素であり、測定ノウハウやツールはクチコミ・マーケティングにおいて必須スキルともいえる。
第4章アフィリエイトアドセンス、ではブロガーがブログを書くモチベーション要素の1つとなっているアフィリエイトアドセンスといった広告収入について扱っている。ブログ・マーケティングに関係なさそうに思えるアフィリエイトアドセンスであるが、ブログが爆発的に普及するのに大きな影響を及ぼしたことは確かであり、アフィリエイトアドセンスはブログ・マーケティングの1つの重要な「方法」だろう。
第5章事例に学ぶクチコミのネタ、ではブログによる試用レポートが持つマーケティング的な意味や、ブログを活用することによって成功したマーケティング事例などを紹介し、どのようにブログを活用することがマーケティングに結びつくのかについて、具体的に理解を深められる情報がまとめられている。
第6章開発者に聞いてみた、ではブログの普及に一役買った個人開発者へのQ&Aが掲載されている。ブログというメディアがその根幹として「個人」の力を活用することによって成長してきたメディアであり、根本的に既存のメディアとは異なる、様々な可能性を持ったマーケティング媒体となりうることがここで紹介されているインタビューからも読み取ることができるだろう。
研究書ではないが、ブログの持つマーケティング効果について総合的に取り扱った良書だと思う。1500円という価格設定と200pちょっとという分量自体、かなり狙って戦略的に作られている気がします。