書評:『ナイチンゲールの沈黙(上)(下)』海堂尊/宝島社文庫

ナイチンゲールの沈黙(上) (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)

ナイチンゲールの沈黙(上) (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)

第4回『このミス』大賞受賞作、300万部を突破した大ベストセラー『チーム・バチスタの栄光』の続編が登場。
大人気、田口・白鳥コンビの活躍再び!
今度の舞台は小児科病棟。病棟一の歌唱力を持つ看護師・浜田小夜の担当患者は、眼の癌―網膜芽腫の子供たち。眼球摘出をせざるをえない彼らに心を痛めた小夜は、患児のメンタルケアを不定愁訴外来担当の田口に依頼し、小児愚痴外来が始まった。

ナイチンゲールの沈黙(下) (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)

ナイチンゲールの沈黙(下) (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)

手術前で精神的に不安定な子供たちのメンタルサポートを、不定愁訴外来担当の田口が行なうことになった。
時同じくして、小児科病棟の問題児・瑞人の父親が殺され、警察庁から出向中の加納警視正が病院内で捜査を開始する。緊急入院してきた伝説の歌姫と、厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔も加わり、物語は事件解決に向け動き出す。
読者を魅了する、海堂尊のメディカル・エンターテインメント。

海堂尊のデビュー作『チーム・バチスタの栄光』に続く田口・白鳥コンビ作品第2弾。ハードカバーはよっぽどのことがない限り買わないことにしているので、文庫本で上下巻。
著者のさらなる進化がみえる作品に仕上がっている。『チーム・バチスタの栄光』は医療現場の深遠な問題を下地にしていたが、本作では医療そのものというよりも医療現場が根本的に?抱える問題をベースとしている。また、本作は二人の超常的な?歌姫が重要なキーとなっており、単純な映像化は難しいだろう。しかし、なんと言おうとも本作はエンターテイメントとして第1作を凌ぐ小説だ。グイグイと読者を引きつける展開はさらに強力なものとなり、しかも絶妙な構成が一般の人に馴染みのない医療現場を舞台としていながらもありありと映像が浮かび上がるように感じさせる。
第3弾もすでにハードカバーでは発刊されているが、さてさて、また文庫化されるのはまた1年後ぐらいになるんですかね。残念ながら。
それにしても2作目でこの出来とは、まぎれもない本物ですね。