VMwareによるSUSEのOEMは何を意味するのか?

VMwareNovellが以下のようなプレスリリースを出しています。

VMwareNovell、戦略的パートナシップを拡張しVMware vSphere〓 環境向け SUSELinux Enterpriseの提供・サポートを開始
【2010 年 6 月 9 日 (米国時間) 米カリフォルニア州およびマサチューセッツ州発】VMwareNovell は本日、OEM 契約により戦略的パートナシップを拡張し、VMwareSUSELinux Enterprise Server OSを配布およびサポートすると発表しました。本契約により、VMware は、当社の仮想アプライアンス ベースの製品群をNovellSUSE Linux Enterprise Server 上で標準化していきます。

http://www.vmware.com/jp/company/news/releases/novell-vmw-partnership.html
この件については、VMwareはあえて大々的な発表とはせずに意図的に「さらっと」発表したように感じましたが、virtualization.infoがそこはしっかりとウォッチしています(^_^;)。
なぜVMwareSUSEを必要としたのか。この点については、Publickeyのエントリー"PaaSに必要なピースを埋めるため、VMwareはSUSE Linuxをバンドルする"に書かれている視点にあるように、「PaaSとしてクラウド市場に打って出るためにベースとなるIaaSとして、仮想マシン上のゲストOSとして機能するフルスタックのOSが必要であった」という面もたしかに一面としてはあるとは思いますが、VMwareの真の狙いはそこではないのではないかと私は考えています。
たしかに仮想マシン環境を提供することができてもゲストOSが存在しなければただの箱(^_^;)というか、役に立たないわけで、OSは重要です。しかし逆に考えてみると、OSはあくまでもゲストOS上のアプリケーションのリソース制御のためだけに必要な存在となっており、仮想インフラ環境においては根幹となるソフトウェアではないとも言えます。VMware上の仮想マシンでどのような種類のゲストOSを実行するかについては数多くの選択肢があり、ユーザは好きなように(多くの場合は使用したいアプリケーションの要件に基づいて)OSを選択すればよいわけです。VMwareSUSEOEMした理由は、OSの選択肢が限定されていないような場合における推奨を提示するとともに、仮想化レイヤーからゲストOSまでの一元的なサポートを必要とする条件がある場合への対処なのではないでしょうか。Windowsを擁するMicrosoftや、Solarisを獲得したOracleRHELを擁するRed hatなどに対して、OSを持たないVMwareのウィークポイントのひとつは一元的なワンストップサービスの提供ができなかった部分であったわけで、この問題に対する対応が今回のOEM契約にあるのではないかと私はみています。
進化は続いていますが、OSは基礎技術と市場の両面においてすでに成熟の域に達しつつありますChrome OSのような先進的な取り組みは行われていますが、これもベースはLinuxです。しかし特定用途向けであればOSはまだ面白い進化を見せそうな気がします。それは「仮想マシン専用のOS」です。
仮想マシン専用のOSを用いる試みはすでに行われています。OracleのJRockit Virtual EditionOracle VM仮想環境においてOracle WebLogic Serverに特化した実行環境を提供します。これにより、汎用OSを用いる場合と比較して30%性能を向上させています。その他Oracleが提供している仮想環境に対する取り組みについては、Publickeyのエントリー"ハイパーバイザ上で稼働するJavaVM、サーバOS不要の「JRockit Virtual Edition」、オラクルから"などを参照してください。Oracleと同様にVMwareJava VM実行に特化した仮想マシン専用OS環境を開発している可能性は十分あるのではないかと思います。VMwareはJava向けフレームワークを開発するSpringSourceを買収ポートフォリオを上位レイヤーに拡張しつつあります。別途買収したGemStoneなどを含めSpringSourceのJavaフレームワークに特化した実行環境を仮想マシン専用に用意することによって、高パフォーマンスな垂直統合環境を提供する可能性は十分あるのではないでしょうか。今回のSUSEOEMはこの仕組みでカバーできない範囲に対するフォローのような意味合いなのかもしれません。VMwareNovellにはそれぞれお互いに思惑があってのOEM契約だとは思いますが、VMwareSUSEに強く依存するつもりはないはずです。1-2年のうちにVMwareが目指すポジショニングが次第に見えてくることになるでしょう。