抽象化されたリソースはサービスになっていく

VMware vSphere/Microsoft Hyper-V/Citrix XenServerなどによるx86インフラの仮想化技術は、サーバ・ストレージ・ネットワークを抽象化する仕組みです。つまりは「サーバ向けのOS実行環境」という、これまでは物理的なハードウェアを直接的に使用してきたリソースを抽象化することで、x86インフラをサービス化することが技術的にも成熟し、ユーザのニーズと合致したことにより、一気に普及しているわけです。ストレージを抽象化するRAIDや、ネットワークインターフェイスを抽象化するNIC Teamingなどといった技術とは異なり、仮想化はOS実行環境そのものを抽象化してしまう一段階上の抽象化技術であったことが仮想化のインパクトといえます。
クラウドは仮想化ではありませんが、仮想化技術はOS実行環境を抽象化しているために特にIaaSクラウド基盤としての使いやすさがあります。AWSが基盤としてXenを用いているということは有名ですし、Nifty CloudはVMwareを用いています。その他多くのクラウドサービス事業者がXenKVMを基盤技術として使用しています。
ただ、まだ現時点では仮想化基盤をクラウドサービスとして使用するための仕組みの部分は各社が独自に開発を進めており、デファクトスタンダード的な仕様は定まっていません。AWSインターフェイス互換を唄うEucalyptusのようなソフトウェアも開発されていたりして注目を集めていますが、広く普及しているわけではありません。今後さらに仮想化技術とクラウドサービスが普及していくことに伴って、いわゆるプライベートクラウドパブリッククラウドを結びつける技術や仕様が必要とされるようになるでしょう。
VMwareのvCloudや、Citrix Cloudなど、仮想化技術各社はクラウド市場においても自らの技術を活かして繋がったサービスを確立し、ポジションを築きたいと争いが始まっています。virtualization.infoが伝えているように、VMwareは単にAPIとしてパブリッククラウドへのインターフェイスを用意するだけではなく、vCloud Service Director (仮称/Project名:Redwood)というサービスを自ら用意することによって積極的にクラウド市場に打って出る戦略を取っています。
仮想化によりOS実行環境をサービス化することはすでに普及し標準化への道を歩み出しています。クラウドによるXaaSはWebサービス系ではかなり普及が始まっていますが、社内システムとして使用するようなリソースとして使われているXaaS系サービスはSalesforce.comぐらいです。クラウドが本格的に普及していくためにも、仮想化技術からシームレスに結合するようなクラウド技術が必要でしょう。インフラレベルの抽象化から、システムレベルの抽象化へ。より高いレイヤーでインフラがサービスとして扱われるようになったときにITはどのように使われ、私たちはどのように関わることになるのか。どんなに抽象化されたとしてもハードウェアやソフトウェアは必ず必要ですが、考え方はだいぶ変わっていくことになるのかもしれません。