VAAI (vStorage API for Array Integration)

vStorage APIは単にVCB Frameworkを置き換えるためもの、ではありません。vStorage APIはvSphereにおけるストレージに関する一連の連携APIをまとめたファンクションセット群です。その中で、VCB Frameworkを置き換える機能は"vStorage API for Data Protection (VADP)"として実装されているAPI群によって実装されています。VADP連携を実装したバックアップソフトウエアのリリースはすでに始まっていますが、まだVADPが提供するすべてのAPIを使い込んだような連携を実現しているものはない模様。整合性の確保やバックアップソフトウェア側の機能との連携など、APIは用意されていてもそうは簡単に機能実装することまでは難しい部分も多くあるでしょうから、ここはゲストOS、vSphere、バックアップソフトウェアがそれぞれ進化しつつ次第に対応範囲が広げられていくことになるでしょう。
…で、今回のエントリーの本題は"vStorage API for Array Integration (VAAI)"。こちらもvStorage APIの1要素です。ちなみにvStorage APIは上述の2つのほかに、"vStorage API for Multi-Pathing (VAMP)"と"vStorage API for Site Recovery Manager (VASRM)"の大きく分けて4つの要素から構成されているらしいです*1
VAAIはいわゆるストレージオフロード機能といえます。VMwareはVMFSという独自ファイルシステムを自社で開発することによって仮想マシン構成ファイルに対する柔軟な管理を実現してきていました。このBlogでも2回(1)(2)にわたって概要紹介を行ったChange Block Tracking (CBT)技術など、非常に優れた実装が行われてきています。しかしソフトウェア的な処理にはパフォーマンス面における限界がありますし、なんといってもストレージ側に実装されている様々な優れた機能が活用できないという課題があります*2。こうした問題に対して、VMwareが用意した解決策がこのVAAIによるAPI連携の実装、ということになります。
VADPの場合と同様に、VMware側が用意したAPIに対してストレージベンダー側に対応してもらうという、デファクトスタンダードとなりつつあるVMwareならではのやり方ではありますが、各社が独自の形式で連携を実装するのではなく、API規格に基づいた実装が行われるということでベンダー間に対して公平な対応とはなりますし、組み合わせ毎の相性や互換性、バージョンアップ時の確認などはやりやすくなるのではないかと思います。

CLARiXやCelerraはVMwareの「vStorage APIs for Array Integration(VAAI)」に対応する。VMware環境の管理者は、vCenterからストレージの監視やプロビジョニングを行えるとともに、従来サーバ側のリソースで行っていたストレージの各種機能を、ストレージ側にオフロードできる。これによりサーバを含めたシステム全体のパフォーマンス向上が期待できるという。

http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1006/10/news077.html
VAAIに対応したストレージを利用することによって、仮想マシンの複製や移動といった処理におけるパフォーマンスは向上しそうですし、Storage VMotionがより実用的なものとなりそうです。さらにストレージ側の機能としてのスナップショットやレプリケーションミラーリングなどの機能との連携ができるようになっていけば、VAAIによって実現するメリットはパフォーマンス面だけではなく、仮想インフラの運用全般に対する利便性を大幅に向上させることになるかもしれません。
ただし、今後はFC/iSCSI/NFSという違いだけではなく、ストレージごとにどこまで連携機能が実装されているかなどの違いを考慮しなければならなくなってきますし、ますます仮想インフラの設計におけるストレージ設計の重要性は高まっていくことになりそうです。
そうそう、上記の記事でこんな記載がありました。

当日発表された機能は2010年7月以降の提供を予定しており、CLARiXやCelerraの既存ユーザーも、ソフトウェアのアップグレードと追加購入で利用できる。

次期vSphere製品のリリース時期を暗示しているような気がしますね(^_^;)。

*1:vStorage APIそのものはストレージベンダーなど限定された開示が行われているため、一般ユーザがAPIセットの詳細情報を入手したり利用することは基本的にはできません

*2:この点については、どちらかというとストレージベンダー側にとっての問題といえるかもしれません