今、このデータはどこにある?〜プライベートクラウド=仮想化?

EMCがFAST(Fully Automated Storage Tiering)という技術を発表しました。要はポリシーに基づいて階層化ストレージへの自動データ再配置ができます、という技術です。LUに対するI/O頻度などの情報に基づいて、高パフォーマンスが求められる論理ボリュームはSSD(EMC的にはEFD)のアレイへ、低パフォーマンスでよい論理ボリュームはSATA(ニアライン?)のアレイへと自動的に配置の変更を行うことにより、自動的に階層化ストレージを実現し、結果としてパフォーマンスの最適化とストレージコストの最適化を実現しようという技術です。

Symmetrix V-MAX, CX, NXそれぞれに対応ということですが、製品により実装レベルや方法はだいぶ異なる模様。統一された技術というよりも、EMCがラインナップに対して横断的に取り組むコンセプト、と言ってしまって良いのかもしれません。Symmetrix V-MaxにおけるFASTのデモムービーはこちら。

FASTは、ストレージの適切な階層にデータを自動移行することで、アプリケーションの高速化とストレージ・コストの削減を図るソフトウェア。
LUN(Logical Unit Number)のI/Oを監視し、頻繁にI/Oが発生するLUNはSSD(Solid State Drive)などの高性能な上位階層のドライブに、そうではないLUNはSATA HDDのような低価格な下位階層のドライブに移行する。
移行ポリシーは、SSD、ファイバ・チャネル(FC)HDD、SATA HDDといったストレージ・タイプやOracle DatabaseやMicrosoft Exchangeなどのアプリケーションの種別、あるいは最終アクセス日のようなパラメータごとに設定することができる。
対応機種は、同社のハイエンド・ストレージ「Symmetrix V-Max」、ミッドレンジの「CLARiiON CX4」(日本名:CLARiX CX4)と統合型NAS「Celerra NS」。

http://www.computerworld.jp/topics/storage/169969.html

価格はSymmetrix V-Max用FAST Suiteが283万円〜、CLARiX用FAST Suiteが61万円〜、Celerra用FAST Suiteが513万円〜となっている。

http://journal.mycom.co.jp/news/2009/12/15/042/?rt=na
…とはいえ、現時点におけるFASTの実装レベルは先進的というわけでもありません。FASTがLU単位での配置最適化を行うのに対して、LUをArray上に直接的に構成するのではなく、Array上にはページやチャンクレットと呼ばれる論理単位を構成することにより、それらをより集めてLUを構成することによりArrayに依存しない仕様を持つ製品がすでにいくつか提供されています*1。この仕様であればLU単位ではなくページ単位でI/O最適な配置を自動化することができますので、より柔軟にストレージを使用することができます。
おそらく、今後より多くのストレージが様々な方式によるデータ配置の最適化機能を実装してくることになると思います。シンプロビジョニングやクローン・スナップショット、レプリケーションなどの数多くの機能が搭載れたストレージはもはや単なるデータ保存のための機器ではありません。サーバとストレージはそれぞれにおける仮想化技術などと相まって、ソフトウェア的に実装していた機能を次々とハードウェア的に(といっても、実際にはハードウェア内のソフトウェアとしてのFirmwareですが…)取り込まれていっています。今後よりその区別が曖昧になり、連携というよりも一体化して様々な機能を提供するインフラとなっていくでしょう。考えてみると、それこそ今現在はお題目が先行している感のある「クラウド」的な基盤環境といえるのかもしれません。

*1:Dell EqualLogicとか…