あの手この手で…差別化?独自性?ベンダーロックイン?

VMwareが"VMware Infrastructure"から"vSphere"へとブランド変更を行い、自社製品であるESXホストの信頼性を維持しつつ他のベンダーにAPIを解放することによって連携製品の市場を創り出そうとしています。これはWindowsにおいてMicrosoftが取った戦略と同じ様なパターンといえますが、仮想化レイヤーはありとあらゆるアプリケーションが実行されるOS環境とは異なる新しいレイヤーとなるため、まだまだ試行錯誤が続いている状況ではあるかと思います。
エンタープライズ向けのOS仮想化製品においてVMwareの持つシェアはかなり高いので、この状況を活用して様々な連携製品が提供される状況を作り出すことはVMwareにとって大きなメリットがありますし、連携製品を提供する各社にとっても、VMwareを舞台にしつつ差別化された提案と独自性を産み出すことができる利点があります。VMwareのシェアの高さは見込み客の多さという意味でもありますので、各社にとっても仮想化連携製品を作るのであればまずはVMware向けとなることはある意味で妥当な判断といえるでしょう。

日本IBMは12月15日、VMware vSphereで構築した仮想化環境を保護するセキュリティ製品「IBM Virtual Server Security for VMware」(VSS for VMware)の提供を開始した。価格は、VMwareサーバ1台当たり68万2000円から。
VSS for VMwareは、ホストやハイパーバイザー、仮想マシンに加え、仮想マシン間の通信など、仮想化環境を構成するさまざまな要素を保護する機能を備えたソフトウェア。ヴイエムウェアが提供するVMsafe APIを活用して特権レベルでハイパーバイザーと連携し、仮想化環境全体のセキュリティを高めるという。

VSS for VMwareVMware vSphere 4上で動作し、ゲストOS側にエージェントソフトなどを導入する必要はない。ただし運用管理を行うには、統合管理システム「IBM Proventia SiteProtector」が必要だ。

http://www.atmarkit.co.jp/news/200912/15/ibm.html

新製品は同日から提供し、価格はVMwareサーバ1台当たり68万2000円からとなっている。

http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0912/15/news069.html
…ただし、エンドユーザとしてはメリットだけでなくデメリットもしっかりと考えてこうした連携製品の導入を判断していくべきでしょう。当然ながら連携機能を提供するベンダーに対して依存することによるロックインが生じますし、VMware自身が提供する拡張機能であればともかく、連携製品は他社が提供する製品となりますので、将来におけるバージョンアップや環境変更・拡張などにおいて互換性が確保されるか、そもそも対応できるかどうかなど考慮しなければならない部分が増えることになります。これまで仮想化インフラとしてはシンプルにVMware1製品が提供する範囲の機能だけを使っていたために、シンプルに考えることができていた仮想化環境は、今後こうした連携製品が本格的に普及するに伴い、仮想化を複雑なものにしていってしまう可能性があります。
VMsafe APIを用いた連携機能を持ったセキュリティ製品は今後各社から登場することになると思いますし、Storage API連携ツール*1など、様々な部分で連携製品の提供が続々と始まっています、

より便利になることは間違いありませんが、仮想化はインフラレイヤーの技術として単体サーバの場合以上のインパクトをシステム環境に与えることになりますので、より慎重な、計画性のある設計・構築と製品の選択が必要になっていくことになると思います。

*1:下記例はEMC Storage Viewer