書評:『知らないと恥をかく世界の大問題』池上彰/角川SSC新書081

科学技術と異なり、政治経済は情勢というものがあり、刻々と状況が変化していきます。グローバル化の流れの中で、ある変化が思わぬところにまで、国境を越えて影響を与える時代になっているわけですが、日々伝えられるニュースをどう理解するかは個々の情報だけでなく、そのつながりを理解しないとわかったことにはなりません。そんな「流れ」をわかりやすく解説する技術として、著者はピカイチといえます。

リーマン・ブラザーズの破綻で始まった世界金融危機。その後、日米ともに政権交代が実現し、金融危機後の新しい世界の在り方が模索されている。そこで、日本はもちろん、世界におけるさまざまな問題点をとりあげ、その中身を理解し、来るべき新しい時代の世界の潮流を読み解く。わかりやすいニュース解説で定評のある、頼れる"お父さん"池上彰さんがズバリ答える。知らないと恥をかく世界のニュースが2時間でわかるおトクな一冊。

週刊こどもニュース」の担当を通じて子供にもニュースがわかるように説明してきたからこそのスキルともいえますが、子供だけでなく大人も多くのニュースを「流れ」としては理解していないからこそ、最近著者がもてはやされている理由でしょう。政治も経済も単純だった時代から、世界はますます複雑になってきています。政治・経済に加え、宗教などがさらに絡み合い、理解しづらい状況となってきているのも確かです。

  • 第1章 新しい「世界の勢力地図」を占うキーワード
  • 第2章 20世紀の覇権国家・アメリカを転落させたもの
  • 第3章 アメリカ一極集中の崩壊−次なる覇権国家はどこか?
  • 第4章 待ったなし! 世界全体が抱える問題点
  • 第5章 新たな火種、世界各地の小競り合い〜国や地域間の衝突〜
  • 第6章 政権交代で解決できるか?−日本の抱える問題点
  • 第7章 世界の中の新しい風を読む〜私たちがなすべきこと

当たり前の話ですが、世界は変化していきます。現在の状況が今後も続くわけではありませんし、国家の凋落・滅亡やパワー・バランスの変化は30-50年程度のスパンで大きく変化しており、今の状況が今後も続くかどうかはわかりません。だからこそ、日々のニュースから「流れ」をつかみ、情勢をざっくりと把握しておくことは大切なことだと思います。来年は今年の続きだとしても、10年後が現在の続きかどうかはわからないのですから。
色々あっても平和で楽しい毎日を過ごすことができればとは思いますが、天変地異などがない限り世の中の変化は情勢からもたらされます。毎日ではなくても、今週・今月にどのような出来事があり、それはどのような「流れ」の中での出来事なのか、知っておいて損はありません。
同じ出来事でも、人によってとらえ方は異なります。単にわかりやすい解説と鵜呑みにするのではなく、著者の分析もそんな1つのとらえ方として考えながら読んでみては如何でしょうか。