書評:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣/集英社新書0520C

刊行予定をすでに確定させ、あらゆるメディアへの露出は今後行わないと宣言している森博嗣による新書シリーズ。2010年にも2冊の新書を刊行する予定の模様なので、期待したいところ。

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

自由とは何だろうか。それは、単に義務がない状態のことではない。何でもしてよいと放り出された状況のことでもない。自分の思いどおりになること−これが「自由」なのだ。当たり前に思えるかもしれないが、このことの深い意味を知る人は少ない。しかし、これに気づくことが、人生をよりよく生きるポイントなのである。
真の意味での自由を知り、自在に生きる。その秘訣について、人気作家がわかりやすく論じる。

小説ではなく、新書として読む森博嗣は新鮮であったが、考えてみると著者としてはこうした文章を書くことの方が慣れた行いといえるのかもしれない*1。著者の生き方はかなり特殊で、ここまで計画的な取り組みができる人は実際にはなかなかいないとは思うのだけれども、それであっても(それだからこそ?)著者の自由論は読み応えがあった。

結論からさきに書くと、「人生の目的は自由だ」と僕は考えている。自由を獲得するために、あるいは自由を構築するために、僕は生きている。少なくとも、今は本気でそう考えているのである。

こう始まる本書で語られる、著者の考える「自由」は何ら特殊なものではないが、自由のために著者が考えて実践していることはかなり強い意志がないと続かなさそうだ。著者はそれを何ら特殊なことではないと考えている様だが、だれもがこのレベルで自分の意志や行動を御せるのであれば本書はいらない(^_^;)。

とにかく、生きていくうえで、「不自由」をなんとか取り除かなければならない。我慢ができるかどうか、という問題ではあるけれど、もし少しでも排除できるならば、その努力をすべきではないか、というのが僕の基本的な考えだ。

そう考える人はある程度いそうな気はするが、その努力を実際にする人はきっと、かなり少数派だろう。
何に支配されているのか、どうすれば自由を獲得できるのか、本書を読んだからといってその極意がつかめるわけではないけれども、やはり事実として自由を獲得できている(様に思える、少なくとも経済的には確実に自由を得ているといってよいはず)著者の考え方は参考にはなるはずだ。

*1:某国立大学で研究職に就いていた方なので