書評:『「価値組」社会』森永卓郎/角川SSC新書082

Podcast狂いもやっと終焉ムード、特に伊集院光のJUNKの過去Podcastをあらかた聞き終えたので、読書モード復活です。まずはリハビリがてら新書から。

「価値組」社会 (角川SSC新書)

「価値組」社会 (角川SSC新書)

金融資本主義の時代を「金融戦国時代」と表現する著者は、リーマン・ショックで金融資本主義が終演したあとにやってくる、安定した「新江戸時代」への大変革をチャンスととらえる。100年に一度のパラダイムシフトの中、一般生活者がどのように暮らし、どのようにお金とつきあっていくべきかを緊急提言。『年収崩壊』『年収防衛』に続くモリタク第3弾は、「勝ち組」ではなく「価値組」を目指す新しい生き方を指南する必読の一冊。

全面的賛成、というわけでもないのですが、森永卓郎の主張は個性的でけっこう同意する部分もあります。「お金に働かせる」金融資本主義は終わり、「人が働くことによって価値を創造する」実物経済に回帰する、という意見はかなりの極論だとは思いますが、それでも過剰な金融資本主義はこの一連のリーマン・ショックにより大幅に縮小し、金融経済もより地に足がついたビジネスになっていくのではないでしょうか。

(p.65)
金融戦国時代では人びとを「勝ち組」と「負け組」に色分けしていました。人生のコースは三つあり、一つ目は勝ち組になろうと思って勝ち組になるコース、二つ目は最初からあきらめて負け組になるコース、三つ目は勝ち組を目指しながら負け組になるというコースです。

(p.67)
私はここまで便宜上「負け組」という表現を使ってきましたが、二つ目のコースを選んだ人が「負けた」とは思っていません。なぜなら仕事の手は抜かず、必要なことはきちんとこなしたうえで、出世目的の無意味なサービス残業はやめる。上司や得意先にこびるために休日をつぶしてゴルフにつきあうといったことをやめることで、余裕のある生活をしようという目的があるのなら、それは勝ち組ならぬ「価値組」だと思うからです。

最近、テレビでも新聞でも、どんなメディアも不況不況不況ですが、極論、最終的には一人一人の意識の持ちようこそが最も重要な要素といえるでしょう。いくらお金をばらまいても、短期的な景気刺激策を打っても、長期的な展望を描くことができない社会に明るい将来は描けません。高い成長を目指すのではなく、低い成長だとしても生活における質が高まるような、まさに自分が「価値組」だと思えるような、期待が持てる様になることこそが第一歩なのではないかと思います。