書評:『減らす技術 THE POWER OF LESS』レオ・バボータ/ディスカヴァー21 (4)

減らす技術 The Power of LESS

減らす技術 The Power of LESS

4回目の今回も原則編の続きです。

  • 減らす原則4 集中する

「集中」は最強のツールだ。ターゲットを絞って集中すれば、望みの結果を効果的に達成できる。ひとつに集中して達成しよう。
マルチタスクであちこちに手を広げるより、シングルタスクで「今はこれ!」と決めたことに集中したほうが生産性は高まる。今この瞬間に集中し、不安とストレスを減らそう。

仕事をするようになってそんなに長くないので、「昔は…」なんて言えるほどの経歴はないのですが、きっと昔より今の仕事はマルチタスクを求められています。モノの生産性向上もありますが、サービスの生産性向上は結局は個々人やチーム、会社のアウトプット効率を向上させることに他なりません。しかも、携帯電話やメール、インターネットなどにより「いつでも、どこでも」な状態はもはや個人が処理できるインプットを超えています。だからこそ、意図して処理プロセスをシングルタスクにする必要があります。シングルタスクこそが逆に、最も効率的な処理プロセスだからです。

マルチタスクがうまくいかない理由

  1. タスクごとにギアチェンジを繰り返さなければならず、かえって効率が悪い。
  2. マルチタスクは複雑だ。ストレスの原因になって、間違いも増える。
  3. それでなくても世の中は混沌としているのに、さらにパニックを起こすもとになる。

人の脳がCPUのようにマルチスレッド処理を前提とした作りになっていて、優先度に応じた処理時間の配分とスレッド切替の効率性があるのであればマルチタスクでもよいのかもしれませんが、残念ながら人の脳はそういう風にはつくられていないようです。それなら、マルチタスクを無理して行うのではなく、最も効率的なシングルタスク処理の方法を身につけるほうが結果的には処理性能を向上することができるといえるのではないでしょうか。

  • ポイント1 朝一番に最も重要なタスク(Most Important Task / MIT)をかたづける
  • ポイント2 集中の邪魔になるものをすべて取りのぞく
  • ポイント3 気が散ったらゆっくり深呼吸して集中しなおす
  • ポイント4 割り込んできた仕事は、とりあえず棚上げする
  • ポイント5 タスクを達成したらスケジュールを見なおす
  • ポイント6 中断するときは、すぐに再開できるようにしておく
  • ポイント7 リラックスして楽しもう

重要なタスクは集中を必要とするものである場合がほとんどです。だからこそ、集中力のあるうちにそうしたタスクは処理してしまうべきです。急ぎのタスクではなく、重要なタスク。それでも割り込みタスクは入ってくることになりますが、だとしても重要なタスクを中心にシングルタスク処理のスケジュールを組むこと。ここにシンプル化の意味があると思います。

過去や未来ではなく「今」に集中すれば、生産的・効率的に、しかも落ち着いて地に足の着いた仕事ができる。
「今」に集中するには練習あるのみだ。最初はすぐふらふらと気が散るかもしれない。
「メタ思考」に走ってしまうこともあるだろう。つまり、「考えること」を考えてしまうのだ。自分は正しく考えているだろうか、正しく考える方法はあるのだろうか……とあれこれ悩みはじめて、そのうちに「今」はどこかへ行ってしまう。人間とはそんなものだ。だれだって経験があるだろう。

アウトプットの質が高い処理ができる人は意図しているかどうかはさておき、例外なくこの"「今」に集中する"ということができている人です。ついつい「あぁ、あれもやらなければ」とか「そうそう、これをやっておかないと」となってしまいますし、「あぁ、ああしておけばよかった」など、今さらどうしようもないことで悩んで時間を潰してしまうことは様々な場面であります。未来を計画することや、過去を反省することが無意味だとは思いませんが、それはそれとして「今」に集中できるというぶれない軸があるかどうかは大きな違いです。
まだ原則編が続きますが、おそらく後1回です。