感覚的に「思いこんでいる」状況と統計的な分析によって見えてくる「実際の姿」について扱った一冊。
3章構造となっており、基礎編・中級編・上級編の3部に別れているのだが、内容的な難しさはない。統計学をかじっていた立場としては多少物足りなさも感じるが、実際のデータをどのように読み解くのかという意味で、楽しく読むことが出来た。
- 作者: 神永正博
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2009/04/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 第1章 基礎編 データを見る 〜 それ、ほんとう?まず、元データに当たる習慣をつけよう
- 生データを入手する
- データを図にする
- 専門外のデータはこうして読もう
- 第2章 中級編 データを読む 〜 統計の基本を知って、正しく読もう
- 第3章 上級編 データを利用する 〜 過去データから未来を予測する
- 未来を予測する
- 思考を錬磨する−オープンコラボレーション
- 自分で考えることの最大の敵
- 統計・文献ガイド
統計思考についての本としては本当にエントリーレベルの本なのだが、本書の価値は「その情報は本当に正しいのか?」という視点を持つためのツールとして統計思考を活用することを訴えている点にある。インターネットなどを通じて様々なソースデータに直接アクセスするコストが非常に低下した今だからこそ、分析された結果としての解説や報道、通説などを単に鵜呑みにするのではなく、自分自身で本当にその情報は正しいのか考えるべき、という著者の主張には強く同意する。データ同士に相関関係があるからといって、そのデータの間に起因関係や依存関係があるかといえばそれはまったく別の話。特に最近のニュースはかなり短絡的にデータを結びつけてしまい、さも明確なつながりがあり「これのせいでこうなった」とする様な、「わかりやすくした」ことをいわば装ったような情報が垂れ流されていると感じている。
ソース情報にリンクを張り巡らすことが出来るネットがこれだけ普及した今だからこそ、もう少しじっくりとデータと向き合うような情報の扱い方を私たちは身につけていくべきだろう。