書評:『もえない Incombustibles』森博嗣/角川書店

森博嗣のノンシリーズものミステリィ作品なので、まぁノベルズ版でもよいかと。

クラスメイトの杉山が死に、僕の名前「FUCHITA」を彫り込んだ金属片と手紙を遺していった。手紙には「友人の姫野に、山岸小夜子という女と関わらないよう伝えてほしい」という不可解な伝言が。姫野とともに謎を探りだした僕は、ある時期から自分の記憶がひどく曖昧なことに気付き始める。
ー冷たく静かに魂を揺るがす、青春ミステリィの名品。

本作はトリックというよりも記憶を辿る過去と現在のイメージが鍵になる作品。タイトルの『もえない』がいったいどういう意味の"もえない"なのかは最後の結末のオチ?につながるわけだが、まぁそれはそれでおいておいて…。
高校生である登場人物たちが小学生の時の記憶を辿り、次第に過去における「事実」と現在起きている「事件」がつながっていく、という展開なのだが、ミステリィといっても1つの街の小さな事件。でも登場人物たちにとっては自分たちの過去の重要なキーとなっている出来事とつながることがそのミステリィのキーとなる…。
通勤のお供として、眠くならずに読むことができるほんわかミステリィ