書評:『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』西尾維新/講談社文庫

文庫化された森博嗣作品が品切れということもあるのですが…文庫化が開始された西尾維新にも手を出してみる。メフィスト賞つながり?1981年生まれの作者なので、同年代だからなのか、特に違和感なく受け入れられる。

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

自分ではない他人を愛するというのは一種の才能だ。他のあらゆる才能と同様、なければそれまでの話だし、たとえあっても使わなければ話にならない。嘘や偽り、そういった言葉の示す意味が皆目見当つかないほどの誠実な正直者、つまりこのぼくは、4月、友人の玖渚友に付き添う形で、財閥令嬢が住まう絶海の孤島を訪れた。けれど、あろうことかその島に招かれていたのは、ぼくなど足下どころか靴の裏にさえ及ばないほど、それぞれの専門分野に突出した天才ばかりで、ぼくはそして、やがて起きた殺人事件を通じ、才能なる概念の重量を思い知ることになる。まあ、これも言ってみただけの戯言なんだけれど−

戯言シリーズ第1作。シリーズを通じてtakeによるイラストレーションで統一されており、内容的にもいわゆるライトノベルなのかもしれないが、作品としてはとても質が高い(ライトノベルの質が悪いといっているわけではないので、念のため)。

  • 三日目(1) - サヴァンの群青
  • 三日目(2) - 集合と算数
  • 四日目(1) - 首斬り一つ
  • 四日目(2) - 0.14の悲劇
  • 五日目(1) - 首斬り二つ
  • 五日目(2) - 嘘
  • 五日目(3) - 鴉の濡れ羽
  • 一週間後 - 分岐
  • 後日談 - まっかなおとぎばなし

シリーズとして、随月刊行とのこと。既刊は3冊。シリーズ9作(上下巻や上中下巻ものが含まれているので、作品数としては6作)なのでしばらく継続して楽しむことが出来そうだ。
森博嗣ともまた異なる作風で(当たり前)、ちょっと世界観に慣れるまでは作品の中に入り込むことが難しいかもしれないが、一度入ってしまえばとてもスムーズに読み進めることが出来る。夏休みのお供としてはとてもよい1冊だった。