書評:『どきどきフェノメノン A phenomenon among students』森博嗣/角川文庫

ブコメディ?なんというか、人が死なないミステリィといってもいいかもしれない。

窪井佳那・二十四歳、大学院のドクターコースに在籍して研究に没頭中。趣味は起き抜けのシャンプーと「どきどき」の探求。悩みは飲食時の記憶喪失とよくわからない自分の気持ち。後輩の爽やか青年・鷹野と人形オタクの水谷、ダンディな指導教官の相澤、謎の怪僧武蔵坊。佳那を一番どきどきさせるのは誰か?−『すべてがFになる』でミステリィ界の地図を塗り替えた異才がおくる初のラブコメディ!

よく考えてみると(考えてみなくても)、ラブコメディは「ラブ」になるまでが描かれていて、「ラブ」になってからは描かれない。恋愛小説といいながら、恋愛が始まる「前」のすったもんだがメインテーマだ。無数にある恋愛小説に比べて、夫婦小説?はもはや純文学の世界になってしまっていて、コメディたりえないようだ。まぁ、日々の晩飯を考えたり、ごみを捨てる曜日を確認したり、日々仕事に追われて週末寝過ごすことを楽しみにしているような生活を描いても面白くともなんともないといえるだろうけれども…。
そんなわけで、本書も研究に打ち込んでいる割には色々なことに手を出して「どたばた」いや「どきどき」している恋愛が始まる前の大学院生のお話。世界が変わったり、何か新しい世界が広がったりするわけではないし、きっと淡々と進んでいく日々の一幕ともいえるちょっとしたお話なのだけれども、やっぱりむずがゆくなりますね。
どきどき(^_^;)。