書評:『ダウン・ツ・ヘヴン Down to Heaven』森博嗣/中公文庫

スカイ・クロラシリーズ第3作。シリーズにおけるストーリーの流れとしては2話目にあたる作品。『スカイ・クロラ』につながる、草薙水素の立場が微妙に変化し出すきっかけを描いた作品といえる。

ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)

ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)

子供はみんな、空を飛ぶ夢を見るのだ。飛べるようになるまで、あるいは、飛べないと諦めるまで−戦闘機に乗ることに至上の喜びを感じる草薙だが、戦闘中に負傷し入院、空を飛べぬ鬱屈した日を過ごすことに。組織に守られる存在となりつつある自分になじめないままに。そしてある日「少年」に出会う!

草薙と函南の初めての出逢いなど、『スカイ・クロラ』を先に書いているが故に、少々矛盾が生じている気がしないでもないが、もしかしたらそこまでも今後の展開で明確になるのかもしれない。
シリーズはここまで、草薙の視点から描かれてきた。出逢いから、草薙にとって函南が特別な存在であったことが本作において明確になる。ティーチャと函南、草薙にとって明確に特別な存在となっていく二人の対比はじっくり読めば読む程行間から伝わってくる。