株式会社エニグモ(http://www.enigmo.co.jp/)の共同最高経営責任者の2名が自社のベンチャーとしてのこれまでの挑戦を綴った1冊。とはいえ、エニグモは現在でもまだ従業員数34名(ウェブサイトより)のベンチャー企業だ。そうした現役バリバリのベンチャー創業者CEOである2人が書いた作品だからこそ、本書はベンチャー創業の生々しさが伝わってくる。日本におけるIT起業の起業物語として、技術力ではなく企画力で戦うエニグモのやり方は非常に独特で、だからこそ、本書もまた読む価値が非常に大きい。
- 作者: 須田将啓,田中禎人
- 出版社/メーカー: ミシマ社
- 発売日: 2008/03/14
- メディア: 単行本
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博報堂で働いていた2人がバイマの企画を思いつき、そしてエニグモを創業する場面から本書は始まる。技術や財務など、それぞれを担当するメンバーを巻き込んでエニグモはスタートするが、非常にしんどい産みの苦しみを経て、エニグモは立ち上がっていく。技術力ではなく、企画力で勝負するエニグモはシステム開発を外注するわけだが、おきまりのパターンともいえる?苦労を経ることになる。
国内・海外のバイヤーと購入者を結びつける仕組みをネット空間に作り出し、オークションともオンラインショッピングとも違う時空的な隔たりを超えた買い物の仕組みを作り出したエニグモのビジネスモデルは本書でも多くの人が評価しているように、非常に優れていると思うのだが、同社の凄さはもちろんそのビジネスモデルを考え出したこともあるのだが、最大の凄さはそのビジネスモデルをシステムの形とし、さらにそのシステムをしぶとく運営し続け、『ゆっくり育てて大きく刈り取る』(本書p.146)ことにしたことだろう。そして、さらに短期で立ち上げられる、当面の利益を生み出すサービスとしてプレスブログを立ち上げる。そうした企画力の強さ、そしてそれを形にする実現力はエニグモ最大の強みといえるだろう。
ベンチャーの起業を志す人はもちろん、仕事をすることの楽しさを忘れてしまったすべての人にとって、きっと読む価値のある1冊だ。
ちなみに、本書はミシマ社という、これまたベンチャーな小さな出版社から刊行されている。そんなところにも、エニグモ創業者2人の志を感じる。