書評:『ウェブ国産力−日の丸ITが世界を制す』佐々木俊尚/アスキー新書047

そういわれてみれば(誰に?)、新書なんて久しぶりかも。
調べてみたら、11/13の渡辺明竜王『頭脳勝負』以来だ。わぁお。2ヶ月以上経ってる。

ウェブ国産力―日の丸ITが世界を制す (アスキー新書 047)

ウェブ国産力―日の丸ITが世界を制す (アスキー新書 047)

ここ1年ぐらいでIT関連の新書で名を馳せた佐々木俊尚の最新作。彼の特徴は、IT関連というテーマでありながらその現場にいる人に注目し、そして取材を重ねた上で執筆を行うところだが、本作でもその本領がしっかりと発揮されている。

  • はじめに
  • 第1章 未来検索ブラジルはグーグルの夢を「見ない」−ベンチャー企業が創る新発想の国産検索エンジン
  • 第2章 持ち運ぶ「ライフログ」端末、ニッポンのケータイ−「ガラパゴスケータイ」が新たなプライバシービジネスを生む
  • 第3章 ブログ検索でマーケティングが一変する−検索そのものではなく、検索から得られたデータを解析するビジネス
  • 第4章 「気づき」を与えるアーキテクチャー−事故につながりそうな要因を検索、解析して対策を作り出すシステム
  • 第5章 リアル世界とインターネットをつなげるウェブ国産力−災害や健康管理をデータ化するP2Pの可能性
  • 第6章 情報大航海プロジェクトを推進する男−彼は何を追い求めているのか
  • 第7章 ウェブ国産力が世界を制するために−立ちはだかる三つのハードルを越えて
  • エピローグ
  • あとがき
  • 参考文献

本書では各所に効果的に対談形式の記載が盛り込まれている。佐々木俊尚の作品が新書というかたちでIT業界以外の人を含め多くの読者に読まれるのは、かなり正確にITとその技術的な課題・実情を描きながらも、テーマの対象がITというバーチャルな対象であるからこそ逆にリアルな人に注目し、その「人」を通じてITの実体を探り出すことによって読者にITの現場を伝えようというスタンスが支持されているからだろう。著者が本作において最も力を入れているのであろう部分が第6章の「情報大航海プロジェクト」についての部分だと思われるが、そのタイトルに「…を推進する男」と人を描いていることからも著者の拘りが伝わってくる。
第6章を通じて、情報大航海プロジェクトの正しい姿を知るだけでも、本書を読む価値はある一冊。