書評:『すばる望遠鏡の宇宙ーハワイからの挑戦』海部宣男・宮下暁彦(写真)/岩波新書1087

カラー版 すばる望遠鏡の宇宙―ハワイからの挑戦 (岩波新書)

カラー版 すばる望遠鏡の宇宙―ハワイからの挑戦 (岩波新書)

この本は面白い。しかもフルカラーで写真満載。200p弱で1000円と、新書としては少々お高いけれども、ちゃんと1000円におさえているところはこの内容と写真の多さを踏まえればとても良心的だ。
この本のいいところは、単なる宇宙研究の最新情報本にしてしまわずに、すばる望遠鏡という存在を通して最新の宇宙研究について紹介しているところ。すばる望遠鏡そのものだけでも、宇宙研究だけでもない、その両面を通じて宇宙の魅力を描いているところに本書の価値があると思う。
私としては、宇宙の最新研究が描かれた章もとても興味深く読ませて頂いたのだが、やはり最も読んでいて面白かったのは第3章と第4章を通じて描かれるすばる望遠鏡建設にまつわるエピソードと、ハワイに根を下ろし、そして日本の天文台として一般の人や学生たちとの交流や共同研究などといったヒトのストーリーだった。なんといっても第3章"極限に挑む"で紹介される、すばる望遠鏡が誇る8.2mの主鏡のものがたりはなんとも感動モノである。
宇宙研究は人々の生活にとって、飯の種にもならない学問かもしれないが、人間の持つ根本的な欲求である探究心を大きく揺さぶる、究極の学問の1つだと思う。