書評:『1万円の世界地図ー図解 日本の格差、世界の格差』佐藤 拓/祥伝社新書063

1万円の世界地図
1万円の世界地図
posted with amazlet on 07.03.26
佐藤 拓
祥伝社 (2007/02/27)
売り上げランキング: 7419

いい新書だったのだが、タイトルに掲げた「1万円」へのこだわりがあまりなかったのが残念。単に統計データを集めるのではなく、1万円という視点を最初から最後まで貫いた一冊にまとめて欲しかった。そういう形で統計データを見てみることによって新しい視点が得られるだろうし、本書の独自性がより打ち出せたのではないかと思う。
本書は日本と世界の様々な格差を統計データの視点から冷静に見た一冊。様々な統計データを集め新書というかたちで本文を右側のページに、統計データを左側のページにまとめている点はわかりやすくて良い。なんとなく感覚でわかっていたことを統計的に説明されると理解がより深まるし、思っていたのとは違う状況が示された統計からは新しい認識を学ぶことができる。統計データは様々な資料として出てきているが、本書のようなかたちでシンプルにまとめられるとより「その統計データが示す意味」がより伝わってくる。
本書で紹介された統計データで示されている様々な「格差」の状況は本書を読んで頂くとして、本書で紹介されている統計データの中から私が単純に興味深いと思った「部分」を紹介してみたい。

  • 2006年に3925円である全国紙の朝夕刊宅配購読料は、1958年には330円だった(11.9倍)
  • 2006年に130円である山手線の初乗り料金は、1958年には10円だった(13倍)
  • 2005年に19万6700円である大卒新入社員の平均給与は、1958年には1万2300円だった(16倍)
  • 平均賃金額、東京を100として比較するとコペンハーゲン(デンマーク)が1位で151.5。順位は東京は18位。
  • 世界の総人口の内、1日1ドル以下で生活している割合は21%(13億7700万人)、1日2ドル以下で生活している割合は半分以上となる53%(34億7400万人)
  • 全世界の国民総所得44兆9833億円の内、アメリカが28.8%、日本が11.1%、上位5ヶ国で56.3%、上位20ヶ国で83.9%
  • 一人あたりの国民総所得(GNI)で比較すると、1位はルクセンブルクの65,630ドル、日本は11位で38,980ドル。ルクセンブルクの59%
  • 女性が生涯で妊娠・出産で死亡する確率、最も低いスウェーデンでは2万9800人に1人、最も高いアフガニスタン・シエラオネでは6人に1人
  • ナミビアの全所得のうち、上位10%の裕福層が占める割合は64.5%
  • 日本における貧困指数(平均所得に対して収入が半分以下の人の割合)は11.7%
  • 日本において貯蓄額が0万円の世帯の割合は25.5%
  • パソコン所有台数(1000世帯あたり)、1位の神奈川県は1203台、最下位の沖縄県は525台
  • 人口10万人あたりの自殺者数、日本は23.8人(10位)、アメリカは10.7人(45位)、1位のリトアニアは42.1人