書評:『オー!ファーザー a family』伊坂幸太郎/新潮社

2006-2007にかけて新聞連載された小説を加筆修正した作品。

オー!ファーザー

オー!ファーザー

作品の順番としては3年前のものなので、ちょっと前のもの。新聞連載された作品ということで?章割りはなく、話の展開は大きく盛り上がったり急激な展開が訪れたりするわけではないのだけれども、緻密に構成された流れはさすが。そのタイトルの通り、父親「たち」が大活躍するのだけれども、父親たちに翻弄されつつどこか冷めた対応をしてしまう主人公と、彼を取り巻く街の世界観がまるで舞台作品のようにコンパクトにまとまっていていい感じ。バラバラに展開していたストーリーが次第に絡み合っていくのだが、その本筋のストーリー展開はさておき、人間関係のやりとりが軽妙でストーリーをより面白いものにしているところが伊坂幸太郎の真骨頂。本作でもその魅力は遺憾なく発揮されています。新刊ですが、ハードカバーではない点もいいですよね。