書評:『新世界より』貴志祐介/講談社ノベルズ

ハードカバーで刊行された際に、けっこう惹かれて買うかどうか悩んだ作品が早くもノベルズ化。しかも上下巻だったハードカバーから、ノベルズ版では1冊にまとめられての刊行。第29回日本SF大賞受賞作品。

新世界より (講談社ノベルス キJ-)

新世界より (講談社ノベルス キJ-)

ノベルズ版のページ数はなんと953ページ。厚さ5cm。書評シリーズではじめて写真載せてみます(^_^;)。鞄に入れて持ち歩くと、その重さを感じます…。

1000年後の日本。「呪力」こと、念動力を手に入れた人類は、「悪鬼」と「業魔」という忌まわしい伝説に怯えつつも、平和な社会を築いていた。しかし、学校の徹底した管理下にあった子供たちが、禁を犯したため、突然の悪夢が襲いかかる!崩れ去る見せかけの平和。異形のアーカイブが語る、人類の血塗られた歴史の真実とは!?

超大作と呼ぶにふさわしいボリュームだけれども、一気に読み進めることができる作品。個人的に、最後の展開はもうちょっとどんでん返しあがあってもよさそうな気もしたが、それでも充分に引き込まれる展開だった。この作品をしっかりとコストをかけて映画化したらなかなか面白そうだけれども、日本で作るのであれば実写よりもフルCGアニメにしてしまった方がよいかもしれない。
呪力や鬼、魔などの要素や、小難しい漢字を多用することで、遠い未来を描いた作品でありながら日本の歴史的な流れをより明確にしている。はやた、TOSHIBA製の自走式自立アーカイブなど、SFの王道的な未来的要素も盛り込まれていてそれらが違和感なく融合している。
壮大なテーマを扱いながらも、核となる部分は4人の主人公たちを中心に描かれており、その本筋が最後までしっかりとぶれずに貫かれており、まさに「一気に読み終える」ことができるSF小説でした。