仮想化はおもちゃ。から全ては始まる〜携帯電話の仮想化なんてなんの役に立つの?

「なんの役に立つかはわからないけど、こんなことできるよ」
一昔前まで、x86サーバにおける仮想化はそんな位置づけだった。UNIXサーバにおけるパーティショニング技術と違い、x86サーバでは標準化によりハードウェアデバイス、OS、アプリケーションなどがベンダーロックインされていないため、仮想化技術を実現するにはソフトウェア的に実現するしか方法がなく、ゆえに初期の仮想化ソフトウェアに信頼性も処理性能もなく、実用的な代物ではなかった。まさにおもちゃ、だ。その後はパフォーマンス面はあまり期待しない使い方として開発や検証環境として使われるようになり、そしてたいした処理性能を求められないサーバシステムから次第に仮想化は受け入れられるようになり、ハードウェア性能の急激な進歩により今の状況に繋がっている。
MicrosoftやCitrix、Xen連合?、KVMなどに追撃を受けながらも市場を開拓しリードしているVMwareが携帯電話における仮想化技術のデモンストレーションを公開した。

ヴイエムウェアは、携帯電話向けのVMware仮想化プラットフォーム「VMware MVP」について、国内で最新のデモンストレーションを披露した。22日から開催されるWIRELESS JAPAN 2009の同社ブースにてデモ展示が行われる。
同社の「VMware MVP」は、携帯電話上に展開できる仮想化プラットフォーム。仮想化プラットフォームを導入することでハードウェアとソフトウェアを分離でき、携帯電話上で複数のOSを稼働させ、切り替えて利用するといったことが可能になる。ARMアーキテクチャーを採用した端末を動作対象とすることで幅広い端末に対応でき、仮想化プラットフォーム上ではOSとしてAndroidSymbian OSWindows CE、μITRONecos、μC-OS/IIがサポートされる。対応OSを限定して開発されたアプリケーションに対しても、本来のOSに相当する小型のシステムとセットにすることで、異なるOS上で利用できるようになる。また、2つの環境で、異なる電話番号をそれぞれ待ち受けることも技術的には可能という。稼働できるOSの数は搭載されるメモリに依存し、2つ以上のOSを同時に扱うことも可能。
法人向けに、業務環境と個人環境を両立できるようなソリューションとして開発されているほか、キャリアを通じて個人向けに提供することも検討されている。

http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20090721_303842.html
携帯電話程度のデバイスでOSレベルから2つの環境を同時に実行することの必要性という意味で、現時点ではこの技術にどれだけの価値があるのかがまだ不明確ではあるけれども、多くのビジネスマンがプライベート用とは別に、会社から支給されている携帯電話も持ち歩いている状況においては思わぬ必要性が見いだされるのかもしれない。特にビジネス向けではスマートフォン化が進み、メールやWeb、スケジュール程度は当然として様々な社内システムに対して携帯電話を通じた接続ができるようになっていった場合、ビジネス用の携帯電話部分のセキュリティを確保したり、万一紛失した場合にも遠隔で携帯電話からOSごとごっそりと消してしまうことなどができればというニーズはあるはずだ。
端末すら携帯電話会社に縛られている日本においてはなかなか受け入れられるのは難しそうだが、数年後には状況が大きく変わっている可能性もあり、VMwareが「次の一手」として取り組む理由もそのあたりにあるのだろう。GoogleAndroidがこれだけ急激に受け入れられていった状況を見ていると、あながちあり得ないことではなさそうに思う。
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/07/21/056/?rt=na
http://enterprise.watch.impress.co.jp/docs/news/20090721_303805.html