書評:『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』國貞克則/朝日新書044

「簿記を勉強しなくても会計がわかる!!」を売り文句に30万部を突破する勢いで売れている様だが、その理由は読んでみてよくわかった。いわゆる素人が疑問に感じる視点にしっかりと立って本書は書かれているからだ。これまで会計に関する書籍を何冊か読んできたが、本書が最もツボを突いた説明がなされていて分かりやすい。

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

簿記を勉強しなくても会計の仕組みが分かる!ポイントは財務3表の「つながり」。
損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)を具体的な会社の事業活動を通じて同時に作り、「つながり」を徹底解説。新会計基準M&Aの仕組みも、すいすい理解が進む。まったく新しい会計学習法の誕生!

本書が分かりやすい理由、それは著者の経歴と立場にあるのではないかと思う。著者は会計の専門家というよりも中小企業を中心とした企業に対するコンサルティングを仕事にしている方のようだ。MBAを取得しているので、財務・会計についても専門的に身につけていることはもちろんだが、コンサルタントとして企業の経営層に対して会計を含めた経営コンサルティングとして人と会話し、説明し、一緒に考えていくことを仕事としているからこそ、普通の人が疑問に思ったり不思議に感じたりする点を押さえた解説を書くことができるのだろう。
タイトルにもあるとおり、本書は財務諸表をそれぞれ学ぶのではなく、実際の企業における活動がどのように財務諸表に反映されていくのか、という視点で構成されている。1つ1つの企業活動がどのように数字化され、その数字は財務諸表にどのように反映されるのか。そしてその数字は何を意味し、どう捉えていくべき値といえるのか。本書は会計を専門にするにはまったく不十分かもしれないが、財務諸表の理解法という視点で見れば非常に秀逸な1冊だと思う。