書評:『死神の精度 Accuracy of Death』伊坂幸太郎/文春文庫

調査部に所属する死神、通称 千葉を主人公とした短編集。

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

?CDショップに入りびたり?名字が町や市の名前であり?受け答えが微妙にずれていて?素手で他人に触ろうとしない−そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。

なんといっても構想が面白い。死神を主人公に、それぞれが独立した6つの短編が収められた1冊なのだが、もはや伊坂幸太郎の真骨頂ともいえる絶妙なリンクがそれぞれに埋め込まれているので、やはり1作目から順番に読み進めることをお薦めする。
死神を主人公にしておきながら、この本全体に漂う幸せ感は何なんだろう(^_^;)。千葉がユニークというか、微妙に人間とずれているところや、口に出さないツッコミがここそこにちりばめられている点などもあるのだが、なんといっても死神ストーリーで実際に多くの人間が死について可と判断されることになるのだが、それでもなんというか、いわゆる「ほっこり」感がストーリーの中に織り込まれているところがいいのだろう。
普通に読めば1話30分ちょっと程度で読める分量だと思いますので、そう言う意味でも通勤本に最適な1冊。