合板・箱の家

難波和彦+界工作舎がまったく新しいタイプの木の家「合板・箱の家」を発表し、クライアントを募集しています*1。これまで集成材造、鉄骨造、そして挑戦的なアルミニウム造のラインナップがあった箱の家に新しいタイプが加わることになりますが、これまでの構造的な違いに加えて今回の合板・箱の家は見た目的なデザインも劇的に展開されているためか、募集資料においても「新たな試みに挑戦する、意欲的なクライアントを募集しています。」とあります。
合板を積層化して組み合わせた構造体を組み立てて骨組み(であり、同時にそれは床面・壁面・天井面として構成される)を構成、その廻りを断熱材と半透明?なFRP波板で覆うという斬新な構成。窓による大開口はこれまでどおり持ちますが、同時に合板を組み合わせた中に作られた小窓的な穴から日差しが差し込み、家全体に明るさがもたらされる様になっています。逆に夜間はそうした穴から明かりが漏れ広がることによって、家全体がほのかに明るさを外部に対して広げることになります。

非常に意欲的なモデルタイプですが、このタイプの家は過剰に家が密集する都心における住居として受け入れられることになるのかについては、興味深いところです。これまでの箱の家は窓による大開口を持ちながらも、奥深い庇やテラススペースによって一定の空間を持って外部と内部を区切っていましたが、合板・木の家においては室内空間は区切られてはいてもより強い外部との連続性が感じられます。
クライアントには強く支持されつつも、箱の家は万人受けする住居モデルではありません。特に一室空間である点は好みがかなり別れるところでしょうし、そもそも建築家に家作りを依頼するということ自体がまだ一般的とまではいえません。しかし、建築家によるデザインは先進的というよりも、より挑戦的な位置付けとして挑戦していくプロトタイプ的な役割があるのではないかと思います。この合板・木の家の取り組みからどのような家づくりの方向性が生まれ、どのように普及型に取り入れられていくことになるのか、興味深いところです。

*1:合板・箱の家の説明についてはこちらの資料(要Acrobat Reader)を参照してください。