書評:『我輩は施主である』赤瀬川原平/中公文庫

施主本の1つではあるのだが、この本はフィクション?ノンフィクション?書き綴られている文章はとても面白いのだが、家に対する苦悶や取捨選択、こだわりなどという意味ではちょっと庶民感覚とは違っていて身近に感じられる内容ではなかったのはちょっと残念。

我輩は施主である (中公文庫)

我輩は施主である (中公文庫)

屋根にニラの花咲く奇想天外なオリジナル住居<ニラハウス>、その建設の顛末やいかに!?土地探し、設計、地鎮祭、材木の切り出し、はてはニラの植え込みまで、個性派住宅完成までの道のりをつぶさにつづる、施主A瀬川源左衛門の体験的超物件小説。

ニラハウスについてのデータはこちらなどを参照いただければ。たしかに屋根にニラが植えられている…。ま、自邸のタンポポハウスもまた強烈な個性の建築家教授による設計なのでまぁわからなくもないが…。

(p.10)
家を建てるとなると半年なり一年なりという期間、その敷地に工事国家のようなものが設立されて運営される。その工事国家の首相は建築家であり、建設大臣は棟梁であり、とかいろいろあって、その国王ともいえる存在が施主なのである。
工事に手出しはしない。国政は首相にまかせてある。でも外交上の問題があって、たまに銀行の人と会見したり、ハンコを押したり、名刺を交換したりしたりというのは国王の仕事である。

わはは。たしかにそんなかんじだ。
家を建てる、ということを選択する人はそんな建設国家の国王になってみたいと思える人なのかもしれないなぁ。