書評:『迷宮百年の睡魔 LABYRINTH IN ARM OF MRPHEUS』森博嗣/新潮文庫

女王の百年密室』に続く、ミチルとロイディ、そして「女王」をめぐるSFミステリー第2弾。

迷宮百年の睡魔

迷宮百年の睡魔

周囲の森が一夜にして海と化したという伝説をもつ島イル・サン・ジャック。22世紀の旅人ミチルとロイディがこの島で出会った「女王」は、かつて別の地に君臨した美しき人に生き写しだった―。王宮モン・ロゼで発見された首のない僧侶の死体、犯人と疑われたミチル、再び消えた海と出現した砂漠。謎に満ちた島を舞台に、宿命の絆で結ばれた「女王」とミチルの物語の第2章がはじまる。

そもそもSFという時点で何でもありなわけで、ミステリーの枠からは外れるといっても良いのかもしれないが、それでもSFミステリーと呼ぶにふさわしい作品。前作、「女王の百年密室」によって明らかにされたミチルの秘密をベースに、さらにその深遠へと一歩迫るストーリーが展開される。
森博嗣作品の中では、ノンシリーズとして分類されている本作であるが、現時点で2冊。文庫版に解説を寄せている綿谷りさを信じるのであれば、このシリーズは3部作とのことなので、まだ最後の作品は登場していないことになる。
シンプルにミステリィからその創作活動を始めた森博嗣が、この夏にアニメーション映画化されるスカイ・クロラなど、その創作のバラエティを拡大していく中で、本作もミステリィ的な要素と、SF的な要素が入り混じっている作品としてとても面白い。
森博嗣の新作が発表される予定の残り期間は短いが、本作の第3部がいったいどういう展開を見せるのか、とても楽しみだ。