書評:『フラッタ・リンツ・ライフ Flatter into Life』森博嗣/中公文庫

スカイ・クロラシリーズ第4作、話の流れとしては第3話。

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

本作の"僕"はクリタ。第1話・第2話の視点がクサナギであったところから、第3話は視点がクリタに切り替わることになる。クリタとクサナギの間には何があったのか、第1作であり最終話でもある『スカイ・クロラ』で読者に提示された大きな謎の1つだ。クサナギの視点からティーチャとカンナミが描かれたように、クリタの視点からクサナギはどう描かれるのか。本作における大きなポイントといえるだろう。

ずっと二人で空を飛んでいても、決して触れることはない。彼女の手を、彼女の頬を、僕の手が触れることはない−「僕」は濁った地上を離れ、永遠を生きる子供。上司の草薙と戦闘機で空を駆け、落ちた同僚の恋人相良を訪ね、フーコのもとに通う日々。
スカイ・クロラ」シリーズ急展開!

どちらかというと、ティーチャは完全に突き抜けており空に生きている感じがし、クサナギは空に生きていたいと願いながらも次第に地上に縛られていき、カンナミはクサナギにとって欠けたパーツを埋める存在であった。そうした中で、クリタは違う意味でクサナギにとって必要なパーツであったものの、同時に空に生きながらも地上に向いた志向をもつ存在だった。
本作は、スカイ・クロラシリーズの中でクサナギを取り巻く世界が変化する節目を描いた限りなく透明な恋愛小説だ。