書評:『捩れ屋敷の利鈍 The Riddle in Torsional Nest』森博嗣/講談社文庫

シリーズ最短の長編(?)。シリーズ8作目に位置付けられてはいるものの、ちょっとほかの作品とは毛色が違い、基本的には保呂草と西之園萌絵がつながり、シリーズとしてのVシリーズとS&Mシリーズのオーバーラップがより明確になる作品。S&Mシリーズと異なり、西之園萌絵が保呂草に結局は上手い具合に右往左往させられているところがいやはやなんとも。

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣が眠る"メビウスの帯"構造の巨大なオブジェクト様の捩れ屋敷。密室状態の建物内部で死体が発見され、宝剣も消えた。そして発見される第二の死体。屋敷に招待されていた保呂草順平と西之園萌絵が、事件の真相に至る。S&MシリーズとVシリーズがリンクする密室ミステリィ

捩れ屋敷のとログハウスの密室がどうつながっているのか、というところを楽しみにしていたのだけれども、その点についてはちょっと残念。エンジェル・マヌーヴァについても、結局のオチはズッコケポイントか?(おっと、まだ読まれていない方 失礼)。
ところで、きっとすでに今刊行されている版では直っていると思うのですが、私の手元にある初版では、目次のタイトル"第1章 来客"が、guestとしなければならないところがquestになってしまっています(questは"第3章 探求"の英語タイトル)。きっと著者にとってはタイトルやこうした拘りは非常に重要な要素だと思われるので、そうした部分ぐらい、確実にやりましょうよ、講談社さん。