書評:『四季 冬 BLACK WINTER』森博嗣/講談社文庫

四季シリーズ完結編。もはやミステリィですらない、SFのような、詩集のような、孤高の極みともいえる真賀田四季の内面を描くとこうなるのか、とも思える作品。

四季 冬 (講談社文庫)

四季 冬 (講談社文庫)

完結編とはいえ、すべての出来事に答えが出されているわけではない。それどころか、より多くの謎を生み出したまま本作は幕を閉じる。冒頭の、四季と犀川のシーンはいつ?真賀田四季博士はいつ、どこに存在する?100年経っても?睡眠からの目覚め?そして、道流。

「それでも、人は、類型の中に夢を見ることが可能です。」四季はそう言った。生も死も、時間という概念をも自らの中で解体し再構築し、新たな価値を与える彼女。超然とありつづけながら、成熟する天才の内面を、ある殺人事件を通じて描く。作者の一つの到達点であり新たな作品世界の入口ともなる、四部作完結編。

森博嗣の作風は、本シリーズを通じて次第に変化しているように思える。まだ本作以降の森博嗣作品のほとんどを私はまだ読んでいないが、本シリーズを通じて森博嗣が何を描いているのか、その答えは今後、作品を読み進めていく中で次第に見えてくるのではないかと期待している。