書評:『アンチハウス ANTI HOUSE』森博嗣+阿竹克人/中央公論新社

アンチ・ハウス

アンチ・ハウス

当時名古屋大学助教授であった森博嗣が、先輩であり同大学の非常勤講師などをつとめながら設計事務所を開いていた阿竹克人に依頼して自邸の敷地内に新たにガレージを作り上げるまでの記録を、主に二人のメールのやり取りとホームページにアップしたレポートをもとに構成した一冊。
庭園鉄道を始め、ラジコン飛行機や自動車作りなど、様々な趣味を実現するために?作家活動を始めた森博嗣が、その第1の殿堂として作り上げるガレージに対する考え方がなかなか面白い。予算1000万円、趣味の工作室と書斎スペースを配置し、車を眺めながら執筆と工作を行いたいという要望をかたちにする。しかも趣味の庭園鉄道を中に引き込み、ガレージ脇に駅舎スペースまでつくってしまおうという、たしかにアンチハウスだ。
本書は面白い本ではない。まぁ多少、市役所と森・阿竹側との大人げのない規制に対するやり取りを楽しむことができるが、森博嗣の著作だからといって読み物としてはおすすめしない。しかし、作家ではない、施主としての森博嗣や、ガレージ作りというただの家作りとはちょっとちがう建築に興味がある方は本書をパラパラとめくってみてほしい。
なお、その後のガレージの使われている様子は森博嗣のBlogに数多く掲載されている写真等で伺い知ることができる。完全に趣味と執筆と車のための、本人が望んだ通りの世界が広がっているようだ。