書評:『宇宙はどこまで明らかになったのか〜太陽系の誕生から第二の地球探し、ブラックホールシャドウ、最果て銀河まで』福江 純・栗野論美:編/サイエンス・アイ新書(ソフトバンククリエイティブ)


宇宙はどこまで明らかになったのか

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書評/サイエンス

日本における宇宙研究の最先端で活躍する研究者たちが共同執筆した一冊。
宇宙に関するリアルな現場で活躍する現役研究者が集まって執筆しているので、最新の研究成果がまとめられた読む価値のある新書としてまとまっている。もちろん、写真や絵はすべてフルカラー。これだけの執筆陣とカラーページ満載で1000円。十分お買い得といえる一冊に仕上がっている。

そもそも宇宙というもの自体があまりにも大きく、あまりにも長大な歴史を持つため、イメージすることができない。宇宙の歴史を1年とすると、人類の誕生は大晦日の午後8時50分ごろ。たかだか3時間分程度の歴史しかない。また、地球をスイカとすると、月は9m先のリンゴ、太陽は3.5km先の10階建てビル…。この程度でももはや想像しがたいのだが、これでも宇宙の中では点にも過ぎない太陽系のごく一部でしかないのだから…もはやイメージすらわかない。しかしだからこそ、人は宇宙に惹かれるのだろう。本書では太陽や月、惑星や彗星、褐色矮星ブラックホールなど、様々な星の姿や形態について、現在進められている研究の成果を交えて紹介している。この第一部だけでも、十分本書の元は取れる情報が詰まっているといえるだろう。宇宙の創世についての話などは、人の人生に何の役にも立たない情報であるにもかかわらず、惹かれてしまわずにはいられない。

  • 第二部 宇宙の最前線

それぞれの研究者の最先端の研究成果が紹介されている。それぞれの研究は非常に特化しているため、内容としてずれている部分があったり、対立しているかのような記載があったりもするのだが、それも含めて本書の真骨頂ともいえる「最前線」の宇宙研究の状況をここでは垣間見ることができる。
太陽系の起源に関する研究や、太陽系外の惑星を探す研究など、どの研究も非常に興味深い。すでに太陽系外の惑星として、地球の6倍ぐらいのサイズのものを発見しているというのだからすごい。光の青/赤方変移によるドップラー効果など、様々な方法が紹介されているが、いくらドップラー効果といってもその移動距離は宇宙の大きさに比べれば非常にわずかなわけで、そうしたレベルでまで観測できるという精度にはただ驚かされるばかりだ。
本書の最後に紹介されている、宇宙の起源に起因する宇宙マイクロ波背景放射についての話題などは、宇宙に関する研究の人類の挑戦が非常に深い領域にまで達していることを伝えてくれる非常に面白いテーマだと思う。ビックバンによって誕生した宇宙に、ビックバンの名残として宇宙の膨張によって引き伸ばされた波長が電波として残っている…。中学生にこの説明をすることは難しいかもしれないが、この宇宙の大いなる謎解きに関するストーリーは将来、宇宙に興味を持つ子供を一人でも多く生み出すという意味でも、ぜひ紹介してもらいたいと思っている。

なお、本書を読む前にはサイモン・シンのビックバン宇宙論を読んでおくと、100倍ぐらい理解が深まりますヾ(*´∀`*)ノ゛。

ビッグバン宇宙論 (上)

ビッグバン宇宙論 (上)

ビッグバン宇宙論 (下)

ビッグバン宇宙論 (下)