書評ー『神の足跡』(上)(下):グレック・アイルズ/講談社文庫

神の足跡(上)
神の足跡(下)

この小説は映画化したら非常に面白くできるかもしれない。各シーンを映像的にイメージすることができるし、アクションも盛りだくさん。場面転換も多いし、登場人物も個性的だ。
そして何よりも、根幹となっている新しいモデルのスーパーコンピュータ"トリニティ"の人の脳を分子レベルでスキャンできるMRIでデータ化し、人の脳をモデルとしたスーパーコンピュータに取り込んでしまおうというコンセプトが独創的で面白い。
が、現実は想像以上のスピードで想像の世界に迫っているのかもしれない。

Google共同創設者Larry Page氏には次のような持論がある。人間のDNAは約600Mバイトの容量が、LinuxWindowsなど現代のOSよりもコンパクトに圧縮されたものである。

http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20343305,00.htm
Googleの取り組みは非常に幅広く、そして究極の理想をかなり現実的に追い求めている様だ。

Page氏によると、人間に対するプログラミング言語があるとすれば、それは人間の脳の働きをも包括するだろうという。同氏は米国時間2月16日夜、当地で開催されたAmerican Association for the Advancement of Scienceの年次カンファレンスで壇上に上がり、自身の仮説を繰り広げた。同氏は、脳のアルゴリズムはそれほど複雑なわけではなく、計算能力を駆使することにより、将来的には擬似できるものであると思うと述べた。

現実の世界に"トリニティ"が姿を現すのはそんなに遠い話ではないのかもしれない。純粋な研究者ではなく、企業であるGoogleが取り組んできることがどういう結果を生むのかはわからないけれども…。
『神の足跡』では一時的な人間と"トリニティ"の緊張状態の発生と、それに対する予想外の結末が展開されて話は終わる。宗教的な思考や心理学などの要素が適度にちりばめられている所も本書が面白い理由だろう。文庫版で上下巻計700P程度あるが、思っていたよりも早く読み終えてしまうであろうこと請け合いです。