書評:『人を動かす質問力』谷原誠/角川Oneテーマ新書21 C-171

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

たった2時間でわかる人を動かす質問のコツ

  • 質問するだけで、子供が急に勉強をするようになる
  • 心理学を応用した、人に好かれる質問の仕方
  • 強力すぎて、裁判では禁じられている誘導質問
  • 「小さなイエス」でもう断れない!質問金縛りの術
  • 「仮にクエスチョン」で本音を引き出す
  • 質問で、自分の人生も思い通りに変えられる

この類の書籍はかなり玉石混淆、しかもアタリは数少ないためあまり読まないのだが、本書はテクニック本であるため根本的ななにかを変えてくれるものではないものの著者の意見はシンプルなので読みやすい1冊だった。たしかに2時間ぐらいでざっと読むことはできると思うので、「わかる」ことはたしかにできるだろう。ただし、それを実践できるレベルにまで身につけることは2年あっても難しいかもしれないが…。

p.24
「なぜ(Why)」の使い方だけは注意が必要です。「なぜ?」と質問されると、「なぜなら〜」と答えるように、答えに論理性を求めるからです。答えに論理性を求めるとなると、答える方は、論理的に答えなければなりませんので、頭を使わなければなりません。論理性がないことを言うと「バカ」と思われるので、一生懸命に頭を使って理由を考えて答えるのです。つまり、質問した相手が「苦痛」を感じるのです。苦痛を感じてしまうと、相手の気分を害する場合もあります。

自分を含めて、この「なぜ?」を苦痛に感じたことがある人はほとんどであるはずなのに、逆に自分で他人に対して「なぜ?」と質問してしまっている。その苦痛をわかっているはずなのに、他人に苦痛を与えてしまう。頭でわかってはいても、それをとっさの受け答え・質問の際にも意識して使いこなすためにはかなりのトレーニング・注意深く意識した対応が必要になる。

p.32
質問には、6つの力があります。

  1. 思いのままに情報を得る
  2. 人に好かれる
  3. 人をその気にさせる
  4. 人を育てる
  5. 議論に強くなる
  6. 自分をコントロールする

質問をするときは、この6つの力のうち、何を目的にするか、を明確にしておくことが必要です。

きっと質問力を使いこなすためにはこの判断をどんなときにも、特に感情的になっている時にさえ意識できるぐらいになる必要があるのかもしれないが、そんなことができる人はあまりいない。でも少なくとも、「質問を準備できる」時だけでも、この意識を明確にして準備を行うかどうかで大きく結果はかわるかもしれない。きっとそうした経験の積み重ねでしか、質問力を「身につける」ことはできないのだろう。

p.166
あらゆるネガティブ・クエスチョンは、ポジティブ・クエスチョンに変換できますし、すべきです。質問には思考を強制するパワーがあります。否定的な質問をすれば否定的に考え、肯定的な質問をすれば肯定的に考えます。

人をマネージする立場の方にとって最も必要な能力はこの変換能力なのではないだろうか。ネガティブ・クエスチョンしかできない上司についていきたい部下はいない。過剰なポジティブ・シンキングはどうかとは思うが、ポジティブ・クエスチョンの積み重ねはお互いにとって好循環を生み出すことにつながるはずだ。

p.202

  1. あなたは何(What)を実現したいですか?
  2. 目標はいつ(When)までに達成しますか?
  3. 目標を達成するために犠牲にすることは何(What)ですか?その上で、あなたは、目標と犠牲のどちら(Which)を選びますか?
  4. どうやって(How)目標を達成しますか?

本書の価値は、最終章として「自分を変える質問力」を持ってきていることだろう。他人に対してではなく、自分に対して質問をぶつけることで質問の持つ強制力を自分に対して発揮させることで自分自身を導いていくこと。つねにぶれない人間はいない、だからこそ時々に自分に対して質問を投げかけることで進むべき方向を再確認し、修正する必要があるからだ。
ここから先は本書の著者にはちょっと申し訳ない気もするが、自分のための覚え書きとしても重要だと思うので記録しておく事項となる。

p.209

  1. よくできた点は何か。
  2. それはなぜうまくいったのか。
  3. 今後も続けた方がよいことは何か。
  4. うまくいかなかった点は何か。
  5. それはなぜうまくいかなかったのか。
  6. 今後やめた方がよいことは何か。
  7. 今後改善すべき点はどこか。

これは質問力を自身の成長に結びつけるための7つのフィードバッククエスチョン。

p.213

  1. 視点を変えた場合、この問題のよい面はなにか?
  2. この問題を解決したら、どのような力が身につくか?
  3. 解決するには、どのような方法があるか?
  4. 解決するために自分がしなければならないことは何か?
  5. そのために今始めなければならないことは何か?
  6. 解決の過程で、自分が代償として差し出さなければならないことは何か?
  7. その代償を差し出したとしても、この問題は解決した方がよいか?
  8. この問題を解決するプロセスを楽しめるようにするには、どのように考えたらよいか?

これは問題が発生した時における問題解決クエスチョン。

p.213

  1. この状況のどこが短所なのか?
  2. その短所は反対から見ると、どういう制限から解放されるのか?
  3. 短所だと考えた前提を疑ってみると、どういう考え方になるか?
  4. 前提を崩した上で、その解放された自由を最大限生かすには、どのように考えればよいか?
  5. その短所をカバーするにはどうしたらよいか?

これは逆転の発想を得るための逆転クエスチョン。

質問を意識して使いこなすこと。それに気がつかせてくれる本書は内容に同意できなかったり、そうは上手くはいかないだろうなどと思う箇所があったとしても価値があると思う。