書評:『1Q84』村上春樹/新潮社

著者ひさびさの書き下ろし長編小説。

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2

青豆と天吾、2人の絡み合ったちょっと切ない交錯を描いた作品。
本書は事前にストーリーその他の情報が一切公開されない形で出版されたが、いまだに多くの書店で平積みだったり品切れだったりしている(ここ最近、やっとどこの書店でも普通に在庫があるようになってきた様だけれども)。特に、BOOK1の方だけが品切れとなっている書店が多いことが印象的。待ち望んでいた既存の村上春樹フリークならば上下巻まとめて買っていくことが多いだろうと思われるわけで(分厚いハードカバーだからとりあえず上巻だけ、という人もそれなりにいるだろうけれども)、それだけ多くの新規読者を獲得しているということだろうからだ。
奇をねらっているわけではない、ある意味でとてもシンプルな文章、ストーリー、描写なのだけれども、その世界観は他の誰にも描くことが出来ない色彩を持っている。かなり詳細な描写は本筋のとてもシンプルな軸を覆う外套に過ぎない。村上春樹の作品が読者を惹き付ける魅力、それはその外套に覆われた軸にそっと触れる瞬間にこそある。