書評:『そして二人だけになった Until Death Do Us Part』森博嗣/新潮文庫

久々にお堅い森博嗣を読んだと思ったら、なるほど、出版年表によると本作はだいぶ初期に書かれた作品で、『森博嗣ミステリィ工作室』を除けば初のノンシリーズ単作長編であり、初のハードカバー本だそうだ。力が入った作品で、けっこうハードボイルドな感じ?、最近の作品とはちょっと違う雰囲気の作品に仕上がっているのだけれども、それが逆にとてもよい。

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれて完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は……。反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。

本作の前半の舞台は吊り橋を支えるアンカーエイジ内の空間だ。しかし、本作の後半の舞台は大きく展開する。内容にこれ以上触れるのはやめておくが、本のいいところは読み進み具合が一目でわかることだろう。そして、本作は読み進めていてかなり違和感を感じた。だいぶ作品が進んだと思ったのだが、まだ読み進み具合はちょうど折り返し地点ぐらいなのだ。しかし、その後を読み進めて本作はとても面白くなる。前半で提示される大きな謎と、後半で展開される解き明かし。
スカイ・クロラが映画化されるということで、森博嗣作品を初めて読んだ人たちにはちょっと違和感を感じるかもしれないが、スカイ・クロラも、本作も面白いと感じるのであれば、きっとどの森博嗣作品を読んでも楽しむことができるだろう。
さて、明日発売の文庫版『τになるまで待って』が発売されるまでに読み終えようと思っていたので、ちょうどよかったです。

τになるまで待って PLEASE STAY UNTIL τ (講談社文庫)

τになるまで待って PLEASE STAY UNTIL τ (講談社文庫)