書評:『赤緑黒白 Red Green Black and White』森博嗣/講談社文庫

Vシリーズ第10作。シリーズ最終作。最終作にふさわしい作品といえるのだが、なるほど、そうくるかといったかんじ。

赤緑黒白 (講談社文庫)

赤緑黒白 (講談社文庫)

鮮やかな赤に塗装された死体が、深夜マンションの駐車場で発見された。死んでいた男は、赤井。彼の恋人だったという女性が「犯人が誰かは、わかっている。それを証明して欲しい」と保呂草に依頼する。そして発生した第二の事件では、死者は緑色に塗られていた。シリーズ完結編にして、新たな始動を告げる傑作。

瀬在丸紅子の名推理と、林や七夏との複雑な関係、へっ君のひみつ(^_^;)、小鳥遊練無と香具山紫子の名コンビの掛け合い、保呂草と各務亜樹良の不思議な関係…、そして、本作の裏に見え隠れする核心とは…。
単純にミステリィとして読むだけで十分に楽しめるのだが、もはやこの作品はVシリーズだけ読んだだけでは十二分には楽しむことはできない。S&Mシリーズから通して順番に読んでみれば、その裏に複雑に絡んだ関連性が予想もしなかったところでつながり、読者は驚きとともについニヤリとしてしまうことになる。
それなりの勢いで続けざまにシリーズを読み進めてきたからこそ、記憶に残っているシーン同士がつながり合うのだけれども、これを数年のスパンで1作ずつ書き上げてきた著者が、そうしたちょっとしたつながり合いを組み立て上げることができる点が凄いと思う。著者の作品が幅広く支持される理由の1つは、こうしたとても高いレベルでのシリーズを通じたかたちで絡み合わせている点だと思う。
きっと著者はメモリサイズが大きいのだろう。現在書き進めている作品だけではなく、そのシリーズを中心として、関連する作品をロードした上で高速に参照しながら作品を書き進めることができる人でないと、こうした書き方はできない。
通勤のお供としてとても楽しませてくれたVシリーズもついに完結。はてさて、次はっと。