確かに、読んでいてシンプルに受け入れられる。しかし、本書の内容として、オビにも書かれている「万能利益の方程式」"利益=(顧客あたり単価−顧客あたり獲得コスト−顧客あたり原価)×顧客数"以上の得るものが本書の中にあるかというと、残念ながらそうでもない気がする。もちろん、この方程式を懇切丁寧に解説してある本文をじっくり読むことに価値は十分あるのだが…目次だけ読んだだけでも十分な人には十分だろう。
- 作者: 勝間和代
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2008/04/04
- メディア: 単行本
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- 第1章 なぜ、利益の概念が必要なのか
- 売上ノルマでは不十分になった現在の日本の経済環境
- わかっているのになぜ「利益ノルマ」がなかなか浸透しないのか
- 少子化経済に向けて、共倒れしないために利益管理はマクロでも必須になる
- 利益の源泉は実は他社が追いつくまでの時間的な余裕である
- 追いつかれるまでの時間が短くなってきている今、その時間内にいかに稼ぎきるかが重要
- まずは、私たち日本人は意外と利益を上げていないことを再認識するべき
- 「儲けなくて良かった」という理由もどんどん消えている
- 適切な利益の確保が持続的な社会とワークライフバランスを作る
- 第2章 利益はどう計算するのか〜慣れればカロリー計算のようなもの
- 第3章 利益を上げる方程式の解き方
- 第4章 原則1 どうやって顧客単価を上げるのか
- 顧客単価について必要な5つの基本知識
- 基本知識1 顧客単価が利益に最も影響する
- 基本知識2 顧客単価と潜在顧客数は相反する
- 基本知識3 顧客が増えるほど、平均顧客単価は下がっていく
- 基本知識4 顧客の持つニーズ、とくにコンプレックスの大きさに応じて顧客単価は決まる
- 基本知識5 プライシングとは、顧客が気持ちよくお金を支払ってしまう仕組みのことである
- 顧客単価を上げるための2大テクニック
- 顧客単価を上げるための実証プロセス
- 第5章 原則2 どうやって顧客獲得コストを下げるのか
- 顧客獲得コストについて必要な5つの基本知識
- 基本知識1 商品力が顧客獲得コストを下げる
- 基本知識2 顧客を積極的に選択することが顧客獲得コストを下げる
- 基本知識3 顧客獲得コストはちょっとした工夫で大きく変わる
- 基本知識4 顧客の獲得も重要だが、ロイヤル顧客の維持はもっと重要である
- 基本知識5 口コミは究極の顧客獲得手段である
- 顧客獲得コストを下げるための2大テクニック
- 顧客獲得コストを下げるための実証プロセス
- 第6章 原則3 どうやって顧客原価を下げるのか
- 第7章 どうやって顧客数を伸ばすのか
- 第8章 明日からできる行動週間〜利益の増やし方をどうやって身につけていくか
- 顧客単価を上げるための行動習慣10
- 顧客獲得コストを下げるための行動習慣10
- 顧客原価を下げるための行動習慣10
- 顧客数を増やすための行動習慣10
- 謝辞
- お薦め参考文献
なんであまり本書に得るものを私が感じないのか考えてみると、どうやら自分が外資の会社にいるからなんでは?という所に至った。なんといっても売上と利益の意識が異常なまでに徹底されている会社なので、利益の重要性を訴えられてもそんなん当たり前では?と思ってしまうのだ。営業職ではない自分でもそれだけ数字を意識させられるのだから、その徹底ぶりはかなりのものだ。週単位でのステータス報告、クオータ単位でのターゲット設定と結果報告。それが末端にまで行き届いている。利益は出して当たり前、課題はターゲットに達したかどうかという基準だ。半期に1度だけしかステータスが伝えられず、かつふたを開けてみたいと利益を出したかどうかもわからなかった前職から考えると、まさに別世界といえるだろう。
…とはいっても、自分のいる会社が全てを達成できているのかと考えてみると、まだだいぶ取り組むべき余地はありそうだ。
原則1の「顧客あたり単価」。熾烈な競争によって価格が大幅に低下したPCだが、それでも利益がないわけではない。とはいえ、顧客単価はその分下がるわけで、それをカバーするにはより多く、広く販売するしかないわけでなかなか大変だ。現在、どのベンダーも単に製品を販売するだけではなく、サポートやサービスを組み合わせることによって顧客単価の最大化を目指している。PCだけを販売するのではなく、周辺機器を合わせて提案したり、サポート契約を進めたり、そして(まだPCよりは利幅のある)サーバにまでいかにアップセルしていくのか、ということが非常に重要な要素となっている。
原則2の「顧客あたり獲得コスト」。オンライン販売や、電話商談、量販店を通じた販売など、販売方式は様々だ。オンライン販売は販売コストを低下させるが、それがイコール顧客獲得コストを下げるかというと必ずしもそうではない。それぞれの方式の特徴に合わせてターゲットとする客層・市場を定め、最適な顧客獲得コストのポートフォリオを構築することが必要だろう。
原則3の「顧客あたり原価」。単品大量生産の原価削減だけでは通用しない現在では、多品種少量生産や個別用件に基づいたカスタマイズ生産をしながらも、いかにベースの仕組みとして生産原価を低く抑えるのかが課題といえるだろう。たとえば、見た目や色の違いはあっても使っているパーツは共通であったり、サイズが違うだけで生産手順を同一にしたりといったかんじだ。
そして最後の原則4「顧客数」。やはり顧客となるきっかけとなる製品と、そこで掴んだ顧客にバリエーションを提供する製品の両輪を持つことには意味があるのではないだろうか。PCとサーバとか、製品とサービスとか。製品がテクニカルに優れていることはもちろん重要なのだが、それ以上に、タイミングや価格、差別化ポイント、そして顧客が求めるニーズに答えたカスタマイズ性などといった要素を合わせて提供できるかいなかは製品そのものと同じぐらい重要な要素となるのではないだろうか。
組織の中で1人が変わっても組織はすぐには変わらないかもしれないが、そうした変化が生じ、広がっていくかどうかは数年後、10年後の組織の命運を別けることにつながるといえるだろう。