書評:『θは遊んでくれたよ ANOTHER PLAYMATE θ』森博嗣/講談社文庫

すでに全巻が手元にあるVシリーズを読み進めながら、現在進行形で文庫版が刊行されているGシリーズを読み進めるという森博嗣疑似マルチタスク読み(^_^;)。

θは遊んでくれたよ ANOTHER PLAYMATE θ (講談社文庫)

θは遊んでくれたよ ANOTHER PLAYMATE θ (講談社文庫)

森博嗣作品を乱読し始めるきっかけとなったGシリーズ第1作『φは壊れたね』に続く第2弾。1作目が文庫されてから2作目が文庫化されるまでの間にS&Mシリーズと四季シリーズの全作、Vシリーズを2作、その他色々と森博嗣作品を20作近く読んだという重症患者ぶりだ。
本作は視点さえ間違えなければ、ミステリィとしての複雑さはない。シリーズものの宿命なのだが、主役級以外にも脇役として重要な立場となっている登場人物が増えてくるために、「この人は犯人になり得ない」と簡単に除外できてしまうため、犯人の絞り込みが単作の作品よりも格段にしやすくなってしまう(もちろん、そうした読者の考えの裏をついて…というパターンもアリではあるけれど)。本作はほとんどシリーズの主要キャラクターしか出てこないため、それ以外の「犯人になりうる」登場人物はわずか数人しか出てこない。しかも登場人物のうちの数人が天才型人間であるため、「わかっていたんだけどねー」的な、ちょっと読者としては引き気味な展開。本書はミステリィとして楽しむよりも、最後までどういう流れでストーリーが進められるのか、という展開と、著者が埋め込んだ「あぁ、あの部分はこの部分を暗示していたのね」といった部分を読み解いたり、そしてなんといっても登場人物同士のかけあいを楽しむのがよいだろう。