書評:『企業と倒産の失敗学』畑村洋太郎/文春文庫

起業と倒産の失敗学 (文春文庫)

起業と倒産の失敗学 (文春文庫)

起業から成長の曲線を駆け上っていく過程において、中小企業の範囲を一歩超えた辺り(売上100億円を超えた程度?)が難しいようだ。おそらく、そのあたりで経営サイドが自社のすべてに目を行き届かせることの限界があるのだろう。その結果、右肩上がりに伸びていた企業の成長は一度頭打ちになるが、経営サイドがその現実を認識できなかったとき、そしてそこを乗り越える新しいステップが踏み出せない現実に経営サイドが気がついたときに、粉飾や帳簿上の操作に手を出してしまえば、おしまいである。
本書で紹介されている多くの起業の失敗の要因は様々であり、回避できなかったであろうものから、回避できたはずのものまである。倒産といってもその形態は様々であり、その後も事業を継続しているパターンや、経営者が逮捕されているパターンなど、その後の展開もまた様々。こうした多面的な失敗学として、本書や、現実における成果物である失敗知識データベースなどの価値はその情報が蓄積されていくのに伴ってより高まっていくことになるだろう。