S&Mシリーズ、そしてなぜか四季シリーズと来て、また正しい?順序に戻ってVシリーズに舞い戻ってみる。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/07/16
- メディア: 文庫
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一年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静子に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静子は殺されてしまう。森博嗣の新境地を拓くVシリーズ第一作、待望の文庫化。
しかし姓名が少々ややこしい。紫子(むらさきこ)だとか紅子(べにこ)だとか、木綿子(ゆうこ)だとか。この木綿子ってよくあるのかな?変換リストにちゃんと出てくるし。
本作において、真犯人自体はそれなりにちゃんと読んでいるとかなり冒頭のシーンですぐにわかる。所在と発言に完全に矛盾が発生しているからだ。小説の読み方は人それぞれだと思うのだが、私の場合はある程度の映像化が脳内において構成される。リアルな映画ほどにまではいかない。結構リアルに描かれた漫画ぐらいかな。必要な要素の配置が完了するまでは読み進める速度はそれほどでもないのだが、おおよそ構成が完了するとかなり読むのが楽になる。場面転換、シーンの切り替え、時間軸の前後が発生してもそれほど問題なくついていくことができる。"あらさがし"読みをするわけではないので、そこまで「犯人はどいつだ」という意識で読み進めるわけではないのだが、けっこう多くの場合、「ん?」と思う点がでてきて、けっこうそこはポイントだったりする。もちろん、著者のダミーにまんまと引っかかることも多いのだけれども、それもそれで面白いので全く問題ない。
森博嗣のミステリィには基本的に、天才肌の登場人物が出てくるのだが、それが「ウザくならない」ように仕上げるところが絶妙。やはり、作者が基本的に頭のいい人間だからこそできる技だといえるだろう。そして、作者がどこまで練って創り出しているのかはまったく伝わってこないのだが、ポロポロとスパイスが振りかけられている。んー、結局なんだったの?という点だったり、おそらくそういうことなのかなぁ、という思わせぶりなところなど、ある意味ではミステリィにあるまじき要素が盛り込まれているのだが、それが森博嗣作品のポイントといえばポイントか。
別に読み直そうとか、2回目はそういうところに着目して読んでみようとか思っていないので、きっと私が見逃しているスパイスもまた多くありそうな気がするが、それはそれ。ま、小説なんて楽しく読めればそれでいいのだ。