書評:『チーム・バチスタの栄光』海藤尊/宝島社文庫

彼女サンタさんより絹本御礼(^_^.)
敬称略。
読んでみると売れた理由がよくわかる。合計500ページ程度なのだから、文庫版でも1冊にしてくれればいいのに上下巻に別けられているところだけは納得がいかないが…。

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599)

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599)

チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600)

チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600)

著者の海藤尊は現役の勤務医。勤務の傍ら書かれた本書は第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した。トリックがすごいとか、ストーリー展開が面白いとかいうわけではないのだが、なんというか、シャーロック・ホームズシリーズのように、シンプルに犯人を暴き出す医療ミステリィとしてシンプルに仕上げられている点が本書の魅力だ。

東城大学医学部付属病院の"チーム・バチスタ"は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。医療過誤死か殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。

医療の現場は「誰もがお世話になっている割には、その実を知らない」世界だが、その現場をリアルに描きつつ、なんといっても本書をベストセラーとした最大のポイントは過剰なまでに個性を発揮する登場人物たちだ。主人公といえる、医師の田口と役人の白鳥の個性は非常に強烈。考えてみると、多くの普通の人たちにとって全く縁のない世界である手術室の中を舞台としながらもたった500ページでこのストーリーを描ききっていることは驚くべきことで、著者の力量を示しているのかもしれない。
通勤本として、ゆっくり読んでも1週間の行き帰り時間があれば読むことが出来るだろう。1週間通勤時間を楽しい時間にするコストだと考えると、本書はとてもコストパフォーマンスがよい作品だった。