書評:『秘伝すごい会議』大橋禅太郎・雨宮幸弘/大和書房


秘伝すごい会議

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書評/ビジネス

本書は"書籍"ではない。また、読むものでもない。かといって、本書に書かれているままをやってみることが万人に取って「すごい会議」になるというものでもない。著者が「はじめに」で書いている通り、本書は「秘伝のタレ」なのだ。いくらタレがすばらしくても、料理がダメでは美味しい料理はできない。しかし、タレは料理をグッと美味しいものにする。タレを開発する暇があったら、万人はタレは買い、料理の腕を上げる努力をする方がよいということだろう。
タレというものがあること、そしてタレを使うことによって、より効率的に料理を美味しく仕上げることができるということを理解していることが重要であるように、本書の内容を理解し、本書に書かれている手順と「なぜそうのようなことを行う必要があるのか」を把握することは非常に大きな価値がある。そういう意味で、本書の価格1,500円はとても大きな見返りをもたらしてくれるかもしれない、価値ある投資たりうる一冊である。

  • はじめに
  • 1日目に行うこと
  • Step1.経営の意思を明確にする
  • Step2.成功をもたらすドリームチームを創る
  • Step3.選出したメンバーを招聘する効果的なやり方
  • Step4.成果の出る会議室の作り方
  • Step5.司会者の決め方
  • Step6.会議をうまくスタートさせる
  • Step7.現時点での問題を前向きな形で棚卸しする
  • Step8.戦略的フォーカスの設定
  • Step9.担当分野を明確にして、共感する(役割分担)
  • Step10.担当者が自らの担当部門の戦略を立て、全員が理解し共有しサポートを得る
  • Step11.1日目のクロージング
  • 2日目に行うこと
  • Step12.2日目までにすること
  • Step13.2日目の初めに行うこと
  • Step14.オペレーティングプラクティス(行動指針)の合意
  • Step15.戦略的フォーカスと役割分担のレビュー(見直し)
  • Step16.コミットメントリストのレビュー(発表し、他からの合意を得る)
  • Step17.問題解決
  • Step18.2日目の最後
  • Step19.3日目以降で決まる
  • Step20.メンバーをうまく巻き込む

本書は会議、特に「成果を出す」ことが必要な会議を行うためのノウハウ本でもある。相互が対立する図式であったり、裏を探り合ったりするような会議には役に立たない。基本的には、会社の結果に結びつけるために会社の中のメンバーによる会議がターゲットとされている。

p.9
会議とは何をするところか?
会議の役割は、情報共有、問題提起、意見交換など、いろいろあると思います。
すごい会議」は何をするところかと言うと、

  1. 意思決定をする場
  2. 約束を尊重する場
  3. 問題を解決する場

であり、これらを会議の参加者が皆で意図的に起こし、体感することで、すごい成果を得ることが可能になります。

何も準備せず、単に開かれる会議を行う場合と、本書にある「すごい会議」を踏まえて開かれる会議ではおそらく会議の結果として得られるアウトプットとその後の行動、そして結果に大きな差が生じるであろうことは本書を読む(というか、内容を理解する)とよくわかる。本書のオビには様々な会社における「すごい会議」の劇的な効果(基本的にはその「ものさし」は売上げの大幅な伸び)が宣伝目的で書かれているが、それらは単に「すごい会議」だけがその理由ではないにしても、「すごい会議」がこの結果につながる大きなターニングポイントとなったのかもしれないと思えるだけの価値が「すごい会議」にはある。

本書に書かれている個々のナレッジは納得度が高く、それぞれ「たしかにこのように会議を進行することで会議を価値あるものにすることができるであろう」ことがわかる。ここでは個々のナレッジを紹介することはしない。十分価値はあるので、ぜひ本書を手に取り、その内容を確認してみてほしい。

要は、本書では全体を通じていかに会議を通じてメンバーの向いている方向をあわせ、そしてその向いている方向に全員で合意したターゲットをセッティングし、そしてそのターゲットに対する責任と役割をすべてのメンバーが認識し、かつ前向きにコミットメントする状態を作り出すための「すごい会議」を作り上げることを1冊を通じて読者に伝えようとしている。

単なるノウハウを紹介するのでもなく、単なる精神論というか、意識の持ちようを訴える訳でもない。
本書の価値はその両面が「すごい会議」には必要であることを説いている点にあると私には感じた。