- 作者: 高嶋哲夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/11/10
- メディア: 文庫
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
それもそのはず、著者は慶応の工学部を大学院修士課程までを修了し、その後日本原子力研究所の研究員を経てカリフォルニア大学に進学したというバリバリの理系脳を持つエンジニア作家だった。地震や金融、環境異変に高性能爆弾、そして細菌と、そのテーマとして扱っている科学分野は幅広いが、ベースとなるスキルを持っているだけのことはあって、読者を引きつける世界観はさすがだ。
天才科学者山之内明が発明した奇跡の石油生成菌ペトロバグ。世界の石油市場を根本から覆す大発明に脅威を感じた国際石油資本とOPECは双方とも山之内拉致、殺害とペトロバグ略奪の指令を発した。だが、ペトロバグは恐怖の殺人生物兵器であることが判明、山之内は暗殺者に追われながら重大な決意を固める。
テーマがテーマなだけに、下手をするとまとまりのない、かつ薄っぺらい内容になってしまいがちな大風呂敷を広げた感が出てしまいかねない内容を上手くまとめ、世界的な謀略の動きと個人的な感情の動きの両面をしっかりと織りなすことができる著者ならではの作品といえるだろう。
結末は少々クサすぎるというか、予想できてしまう結末ではあったものの、読んでいて映像がリアルにイメージできる描写力は、やはり映画の原作として採用されるだけのことはある。科学技術サイエンスもの?好きの方にはおすすめな1冊。